編集長のズボラ料理(86) イカ刺しのウニ・卵づけ
イクラ、ウニ、アワビ。海の食べ物で、この3つに対して、コンプレックスがなかなかぬぐえない。高級品のイメージが強いので、食べるのにおじ気づいてしまう。
北海道・鶴居村に、冬のタンチョウを見に行ったことがある。2泊で計画を立て、1泊は鶴居村だが、もう1泊は釧路市のホテルにした。炉端焼き発祥の店「炉端」にも行ってみたかったし。
では、どこを選ぶか。ちょっと調べてはみたが、結局はタンチョウ見物の先輩である友人が口にした一言が決め手になった。「ラビスタ釧路川は、朝食のバイキングにイクラが出る」。何! バイキングなら、お金を気にせず、イクラが食べ放題ではないか。
食べた。しょっぱなからイクラ丼である。ご飯少なく、イクラは多く。連続イクラは恥ずかしいので、ちょっとイカに手出しておいて、やや周りの各を気にしながら、またイクラを大量にスプーンですくって、ご飯に乗せた。ごはんはごく少なく。
イクラは何とかなるが、アワビはやっかいだ。さらに高級感がある。
友人に、取材で知り合ったおばちゃん芸術家がいる。たまに酒を飲みに行くことがあるが、世間知らずだからやっかいこの上ない。「殻つきのアワビを焼いたのが好きなのよ」と、平気で言う。向こうの方が年上なので、僕がおごることはない。しかし、割り勘であったとしても、大きなアワビだったら、世間を知っている僕には大変なのだ。
その日が来てしまった。お世話になったことがあって、僕がおごることにしていた。「アワビが食べたい」。出た、その言葉。
しかし、対策は立てておいた。それは、毎日新聞大阪本社に近い梅三小路にある居酒屋「うしお」である。以前にも書いたが、アワビの踊り380円。奇跡的な値段がうれしい。ただ1つ、難点がある。アワビが小さいことだ。飲み終わって、言う。「次はもっと大きいのにしましょう」。何! 世間知らずの人である。
ウニは、一般的にはアワビほどではない。ただ、僕の中ではアワビ以上なのだ。大学生の時だった。弟が北海道旅行から帰ってきて、旅の体験談を話した。「利尻島の宿で、ウニが丼で出てきた」。何!
それから半世紀近くたったが、丼どころか、茶碗までもいかず、せいぜいぐい呑み1杯のウニしか食べたことはない。兄だから弟には偉そうにできるのだが、ウニだけは頭が上がらない。
イカの糸づくりを大きな皿に盛る。小皿にウニ、卵の黄身を用意して、しょうゆかける。適当に混ぜて、イカをつけて食べる。これなら、ぐい呑み1杯のウニでも大丈夫。でも、丼1杯食べてみたいなあ。(梶川伸)
更新日時 2014/05/15