編集長のズボラ料理(48) 赤みそパスタ
僕は子どものころ、野菜が嫌いだった。還暦も大きく超え、酸いも甘いもかみわけたという訳ではないが、野菜は何でも食べるようになった。
1番最後まで食べられなかったのはピーマンだった。2位はゴボウ、3位はキュウリと並ぶ。キュウリは青臭さが嫌で、どうしても食べなければならない時は、「何で皮にブツブツがあるんだ」とブツブツ言いながら、口に運んだ。
娘がその血を引いて、とっくの昔に大人になってはいるが、いまだにキュウリに対して強い敵対心を持っている。それだけに、防衛能力は高い。キュウリもみやモロキュウのように、もろにキュウリが見えるようなものは、すぐに自分から1番遠いテーブルの隅に追いやる。機械的な行動である。
イモサラダや巻きずしのように、キュウリが身を隠して口の中に侵入しようとしても、危険を知らせるセンサーが働くようだ。はしでほじくると、99%の確率で探し当てる。それを取り除いて食べるわけではない。もろ見えの場合ほどではないが、できるだけそれを遠ざける。巻きずしのキュウリを抜いておいたことがあったが、そんな作戦はすぐに見破られた。キュウリの嗅覚を装備しているのだ。
娘の警戒態勢は、キュウリの周辺領域まで及ぶ。ウリは食べない。それは類似点があるから、理解はできる。スイカも食べない。メロンも同様。色が似ているせいか、グリーンピースの豆ご飯も、決して口にしない。これは、理由が違うかもしれない。エダマメは食べるのだから。
キュウリ嫌いの子どもは多いと思っていた。ところが、である。たまたま、京都市北区の新大宮夏祭りに出くわしたことがある。何百メートルもある長い商店街に、たくさんの出店が並んでいた。漬け物屋の前の屋台で、丸ごとのキュウリにはしを突き刺し、氷の上に乗せ、キュウリバーとして1本100円で売っていた。出店の中で1番といって良いほど、売れに売れ、子どもたちもボリボリ食べているではないか。
そういえば、京都市・大原でも似たような光景を目にしたことがあるが、そこも漬け物屋だった。キュウリバーはもはや、ファッションなのだろう。
赤みそにみりんと加えて、柔らかいソース状にする。サンショウの実があれば、それもアクセントに入れる。パスタをゆでて皿に盛り、赤みそソースを乗せ、キュウリの千切りを添え、混ぜて食べる。娘がいる時には、絶対に作らないが。(梶川伸)
更新日時 2013/07/31