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編集長のズボラ(44)アゴの干物のお茶漬け

アゴの粉末も、良いだしが出る

 旅に出ると、道の駅や地元の物産を売っている施設は、クモの巣みたいなものだ。特に女性主体のグループで行くと、クモの糸にからめ取られて、身動きができなくなる。
 僕は、毎日新聞旅行の遍路旅の先達(案内人)をしている。参加者は、年齢の高いおばちゃんたちが中心だ。道の駅は駐車場も広く、トイレ休憩には持って来いなので、よく利用する。理由はそれだけではない。おばちゃんは買い物が好きだから、寄ってほしいという気持ちが、もろに顔に出る。
 買い物は帰りにするものと思う人がいるだろうが、それは甘い。行きの道の駅でも、動物が獲物を探すような目になる。まだ1つの寺も参拝していないのに。「帰りに、ここに寄るかどうか分かれへんやないの」。それが理由である。
 帰りになると、おばちゃんの行動はパワーアップする。中には、備え付けのかごを手にする人もいる。やる気まんまんである。スーパーの特売日と、何ら変わらない。で、買うものは何かと言うと、ダイコンであったり、キュウリであったりする。確かに、安いことは安い。「何も四国で」と思うが、動き出したら止まらない。
 ソラマメの入った袋を見つけ、「こんなに入っていて200円。家の近くなら400円はするわ」。そうか、旅行代金を払って、四国に行けば、200円も得をするのだと理解する。その間、男はどうするのか。ただ、時間が過ぎるのを待つ。
中には、大物抱える人もいる。高さ50センチほどもある丸型のガラスの花瓶。「安かったのよ」「持って帰るの、大変じゃないの」「どうせ、バスだから」。いや、大阪駅の近くで、バスを降りてからのことを聞いているのだが。
 スイカを1玉買って帰った人もいた。確かに、端境期ではあった。食事制限をしている夫が好きなので、買ったのだという。ええ話ではある。後日、その女性に出会うと、「豊中の駅前の店でも売っていたのよ」。何のこっちゃ。
 先日、愛媛県の遍路旅の案内をした。帰りにJAが設置している北条市の「周ちゃん広場」で、トイレ休憩の時間を取った。その後、30分ほどバスで走り、高速道路の石鎚(いしづち)山ハイウェイオアシスにも寄った。ここも野菜や果物が豊富だからだ。しかし、わずか30分後のトイレ休憩。僕は言った。「絞り出してください」
 周ちゃん広場で、僕はアゴ(トビウオ)の丸干しを買った。それが今回の主役である。アゴをごく軽くあぶり、身を骨から外す。ご飯の上に青ノリとともに乗せ、ワサビも添えて熱いお茶をかける。1分ほど置いて、アゴのだしが出たところで食べる。実は、僕も道の駅が好きなのだ。おばちゃんたち、散々悪口を言って、ごめんなさい。(梶川伸)

周ちゃん広場 毎日新聞旅行 先達 アゴの丸干し

更新日時 2013/06/11


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