編集長のズボラ料理(42)シラスのワインソース
僕は日本酒が好きだ。でも、ガバガバは飲まない。
大阪市・ミナミの居酒屋「福盛」のカウンターで、日本酒をチビチビ飲んでいた時の事だ。隣で飲んでいた男性客から聞いた飲み方には、度肝を抜かれた。ガバガバどころか、ドバッも通り越して、ズドンといった感じなのか。
高知県香南市の春のイベントに、どろめ祭りがある。マイワシやカタクチイワシの稚魚を、その地方ではドロメという。一般的にはシラスと思えば良い。祭りはドロメの豊漁を願うものだが、メーンイベントは1升(1.8リットル)の日本酒を大きな杯に入れて、飲み終わるタイムを競う。
隣の客は大阪の人間である。会社の共同経営者が高知出身で、たまたま2人で高知に行った際、早飲み大会に参加して優勝した。タイムを聞いて、ひっくり返った。12秒3。陸上競技の100メートルではないんだから、もう。大酒飲みで知られる高知の「いごっそう」も、大阪の客人の優勝をかっさらわれて、悔しかったに違いない。「こりゃ、いかんぜよ」
しばらくして、その客に招待状が届いた。高知県の酒造組合の総会に招かれたのだ。行ってみると、席は県知事の隣だった。どろめ祭りの優勝者は、高知ではそのくらい偉いのである。いい気分に浸っていると、名前を呼ばれた。正式の表彰式だと、彼は思った。ところが、違った。司会者はこう言ったそうだ。「ここで、もう1度、1升の酒を飲んでもらいましょう」。招かれたのは、そのためだった。
弟夫婦が時々、家に遊びに来る。2人してワイン好きなので、必ずワインを用意しておく。当初は無難にフランス産を買っていた。そうすると、「フランスは核実験をした国だから、イヤ」と、わがままを言う。僕はワインを飲まないから、何を買っていいか分からない。困った夫婦である。
先日、弟夫婦が来た時に、今回紹介する料理を出した。たまたま、昼時間に大阪・梅田を歩いていたら、店の前にランチの献立が張り出してあった。その店には入らず、字面から想像して作ってみた。
白ワインを鍋に入れて火にかけ、アルコール分を飛ばす。さましてから、色がつかない程度に白しょうゆを数滴たらし、青ノリを入れ、シラスの上にかける。赤ワインのあてに、白ワインソースのシラスでしゃれてみた。白ワインは家にあった安いワインの残りを使った。後で気付いたが、フランス産だった。バレなかったけど。(梶川伸)
更新日時 2013/05/22