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編集長のズボラ料理(41)ワサビ味はるさめ

色合いがさわやかなので、夏向きかも

 はるさめは大したもんだ。そう思ったのは、中華料理店で初めて、ひき肉のレタス包みを食べた時だった。随分と昔のことである。
 この料理はたいてい、はるさめを揚げてからバラバラに砕いたものの上に、炒めたひき肉が乗っている。ひき肉は、細かく切ったタケノコやタマネギと一緒に炒めてあることが多い。
食べる時は、ひき肉とはるさめの両方をスプーンですくい、レタスの上に乗せ、クルクルと包んで食べる。レタスのシャキシャキとはるさめのポリポリで、いくらでも食べられる。
 2人の子どもが小さいころは、家でもよく作った。作り出すと、しょっぱなから、「大したもんだ」と思う。わずかな量の固いはるさめを、熱した油の中に入れる。ほぼ瞬間的に、ぼう大に膨れ上がる。ビッグバンでも起きたのかと、その成長率に感動する。当然のことながら、材料費は安い。
 盛りつけの際にも、大いに喜ばしてくれる。それは、ひき肉とはるさめの量の割合だ。ひき肉はちょっとでも、大量にはるさめを敷いているので、全体はボリュームたっぷりに見えるのだ。食べ盛りの子どもを、見た目でごまかせる。その立役者は、ひき肉に下で脇役としてじっと我慢をしているはるさめ様なのだ。感謝、感謝。
 ただ、同じものを何度も食卓の出すと、子どもたちも悪知恵を働かす。スプーンを浅く入れて、ひき肉をかっさらっていく。僕は酒を飲んでいるから、食べるのが遅い。いつしか、大きな皿にははるさめだけが残る。仕方がないから、肉汁だけをつけて食べる。こうなると、感謝の心は悔しさに変わる。これも、はるさめが添えものに地位に甘んじているからだ。
 そこで今回は、長い下積み生活をしているはるさめを、主役に抜擢することにした。強いだしをとり、白しょうゆを少し入れる。それにチューブ入りのワサビを大量に絞り出し、よくかき混ぜて、ボウルに入れておく。はるさめをゆでて柔らかくし、だしワサビのボウルに千切りにしたワカメとともに入れ、しばらく置いて味をしみ込めせる。はるさめを皿に盛り、青ノリの粉をふりかけて完成。堂々たる主役である。しかも、主役に払うギャラは、たかが知れている。まあ、1人芝居に近いものではあるが。(梶川伸)

編集長のズボラ料

更新日時 2013/05/08


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