編集長のズボラ料理(842) ミンチはさみカラシレンコン
知らないまま挑戦するのは無謀なことだ。しかし、怖いもの知らずだから、ある意味で強いことでもある。今回は、カラシレンコンに挑戦して、両面を再確認した。
カラシレンコンには、毎日新聞新聞記者だった若いころの思い出がある。大阪社会部の記者だった。
記者には宿直勤務がある。当時は5人が泊まった。午前1時半になると仕事が一段落し、軽くビールを飲む。飲むためには、つまみがいる。つまみの調達は、宿直メンバーの1番若い記者の担当だった。
僕もしばらく、つまみ担当だった。宿直は午後6時から。といっても、その日の勤務が6時から始まるわけではない。勤務は朝からで、そのまま夜にもつれ込む。翌日も夕方まで働く。そんな無茶苦茶な時代だった。昼間、記者クラブで居眠り、それどころか熟睡する記者がいたが、当たり前である。
会社は梅田にあったから、僕は阪神百貨店の地下食料品売り場でつまみを買うことにしていた。みんな真夜中の小宴会を楽しみにしていたから、気のきいたものを選びたかったからだ。
実は、もう1つ理由があった。先輩記者は買ってきたつまみで、若い記者の品定めをするのだ。「お前、センスあるな」「何や、乾き物ばかりやないか」。新聞記者能力とは全く関係ない評価なのだ。だから僕は乾き物は極力避けた。
先輩の査定が良かったつまみが2つあった。1つは、小鯛のササずし。北陸の名産で、、さな樽に切り身の酢漬け鯛が入っていた。先輩の査定は、「樽は小さいのに、たくさん入っているな」。
もう1つは、熊本名物のからしレンコンだった。先輩の査定。「鼻にくるー!」。どちらも良い評価だが、どうでもいい評価でもあった。
何の知識もなく、カラシレンコンを作ってみることにした。それなら、阪神百貨店で買えばいい、と言われそうだから、ミンチはさみ揚げとのコラボにした。
レンコンは皮をピーラーでむく。輪切りにして、軽くゆでる。合いびきミンチとみじん切りのタマネギをボウルに入れ、白だしを少し加えてよく練る。2枚のレンコンの間にミンチをはさみ、レンコンの穴にも詰める。さて、からしはどうするか。記憶では表面が黄色かったから、からしを入れた衣を作り、それをつけて油で揚げた。
先輩がいたら、査定はこうだろう。「鼻に来ない!」。無謀だったか。あまり辛くなかったのだ。次はレンコンにもからしを塗ってみよう。(梶川伸)2025.12.19
更新日時 2025/12/19