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編集長のズボラ料理(40)エビとソラマメの炒め煮

スープの色が濁らないようにすると、おいしそうに見える

 エビは偉そうにしている。きっと、「僕はごちそうなのだ」と思っている。
 天ぷらの主役はエビである。フライも、エビフライが王様だ。店で食べると、たいそうな衣を着て、たった2匹で「満足せよ」と、プライドを見せつける。
 初めて四国遍路に出た時に食べたエビは、17年たっても思い出す。徳島県鳴門市の1番霊山寺をスタートし、その日は「寿食堂」という名の遍路宿に泊まった。夕食はすしの盛り合わせと、カモの1人鍋だった。カモ鍋なのに、1番上にエビが1匹、ドーンと乗っていた。
 宿の主人は、遍路のスタートを祝ってやろうと思ったのだ。祝いなら、すしである。鍋を組み合わせ、コテコテの祝い膳(ぜん)だが、鍋はカモではなくエビが主役でなければ落ち着かないのだろう。
 高松にいたころ、銀行の支店長から夕方、「至急に会いたい」と電話があった。「何か不祥事でも」と思って、指定された店に行った。「東京からお客さんが来る。みんな口がこえているので、何か良い食べ物はないだろうか」。地方の支店長にとっては、大問題なのである。「しょうもない」と思ったが、おごってもらったから、それは口に出さなかった。
 教えたのは、高松市・庵治(あじ)港のそばの民宿のタイ鍋だった。港で水揚げされた大きなタイ1匹を、その姿のまま使う大鍋だった。それに地元のエビを大量に入れ、あとは野菜。エビはだしと、助演の食材という2つの大役をはたす。
 値段は2万円と告げると、「ちょっと高いね」という反応。僕なら、「エーッ」と3回ほど叫んで「パス」と言うところだが、さすが名にしおう銀行の支店長。驚きが中途半端なのだ。
 実は1鍋が2万円というオチを用意していた。普通は5~6人で食べるから1人にすれba
3000円~4000円。民宿のおやじさんは「10人でもいける」と言い、そうなれば2000円。そのことを話すと、安心したようだったが、驚きと安堵(ど)の落差が少なく、いたずら心は不完全燃焼に終わってしまった。
 ソラマメは軽くゆで、皮をむく。スープの素、塩、コショウでコンソメスープを作っておく。フライパンに軽く油をひき、むきエビ、白ネギの輪切り、ソラマメを炒め、スープを加えて煮立てたあと、カタクリ粉でとろみをつける。(梶川伸)

エビとソラマメの炒め煮 寿食堂

更新日時 2013/04/12


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