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編集長のズボラ料理(34) 切り干し大根XOじゃん

貝柱が多めで、あまり辛くない方が合うような気がする

 職場の仲間と、鶴橋に焼き肉を食べに行った。20年ほど前まで何度か世話になった店「新楽井(あらい)」だった。
 初めてこの店に入った時の印象が鮮烈だった。肉は七輪で焼くのだが、床に座り、テーブルはない。席に着くと、ビニールのごみ袋が出てきた。臭いがつくので、持ち物や上着は袋の中に入れるためだ。それから何度が訪ね、ごみ袋の効果も空しく、煙とニンニクの入ったタレの臭いに包まれて帰り、家族に「焼き肉食べたの?」と聞かれる繰り返しだった。
 さて今回。ごみ袋は変わっていなかった。驚いたのは、ゴーグルが用意されていたことだった。煙よけだが、大層なので使わなかった。すると、煙が僕の方ばかり攻撃してくる。隣の七輪を見れば、ちゃんとゴーグルをしている。失敗した。正統派焼き肉には、それなりの流儀があるのだ。食べながら、仲間の1人が言った。「ごちそうと言えば、やはり肉やね」
 娘夫婦が、僕の家のすぐそばに住んでいる。夕食に夫婦で時々やって来る。ところが、最近は娘1人が増えてきた。夫が玄米菜食に目覚めた。娘も付き合っているらしいが、それが連続すると、「肉、肉」と言って駆け込んで来る。やはり、肉はごちそうなのだろう。
 娘は掃除が好きで、家にくると片づけを始める。油断をすると冷蔵庫にまで及ぶ。歩いて2分ほどのところに、イオンの大規模モールがあって、「イオンは冷蔵庫」と割り切っているから、自分の家の冷蔵庫には、何も入っていない。だから、親の家の冷蔵庫にまで目をつける。ちょっとでも賞味期限が過ぎていると、すぐ捨てる。冷蔵庫の奥の方にあるものは、「長い間使っていない」と決めつけて捨てる。
 かくして、最近捨てられたものがある。「XOじゃん」だ。新楽井で「肉だ」と言った同僚が、中国旅行の土産にくれたものだった。干し貝柱がふんだんに入っていて、チビリチビリと大事に食べていたのに、血も涙もない娘だ。仕方がないから、デパートで貝柱の多いものを買ってきたが、土産のものには及ばない。
 XOじゃんの話題に持っていくため、鶴橋まで寄り道をしてしまった。切り干し大根を、だしと砂糖、みりん、しょうゆで煮る。それに、貝柱多めのXOじゃんを乗せて、混ぜて食べる。これなら、菜食の娘の夫も食べるだろう。(梶川伸)

編集長のズボラ料理 新楽井 XOじゃん

更新日時 2012/10/13


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