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編集長のズボラ料理(757) アスパラハンバーグ

アスパラが見えるように

 ハンバーグは無難な料理だと思う。遍路旅の先達(案内人)をしていると、つくずくそう思った。
 遍路旅の行程表は僕が作った。1番気を使ったのが、昼ご飯だった。参加者にとっては食べるこては楽しみの1つだが、それぞれに好き嫌いあるのでやっかいだ。
 香川県では讃岐うどんの店を選ぶことが多かった。かなくま餅福田では、あん餅を乗せたうどんを用意した。香川では正月にあん餅雑煮を食べるので、その雰囲気を味わってほしいと考えたからだ。
 あん餅に拒否反応を示した人がいた。ただ、これは想定内。別のうどんメニューもあるから、何とかなる。
 「そうめんは好きだけど、うどんは嫌い」という人には困った。人気のうどん屋に入ってから、そう言うからあせった。休みだったのに頼み込み、わざわざ僕たちのグループのために店を開けてもらっていたので、注文していた釜揚げうどんとかやくご飯しかない。その人はうどん3本とかやくご飯だけの貧しい昼食になってしまった。そもそも、そうめんとうどんに差をつけるのがおかしいのだ。
 香川県丸亀市に、人気の「一鶴」がある。焼いた骨付き鶏が大人気だが、ここを選んだ時は、さすがに近くに予備の店を用意していた。鶏が嫌いな人は結構多いのだ。案の定、3人は予備の店に行った。
 その点、ハンバーグなら心配ない。嫌いな人は、まずいない。松山市でハンバーグランチを食べた時も、不満は出なかった。洋食屋の名前が「カラス」だったにもかかわらずだ。そんな安定感がハンバーグにはある。
 食べ物にわがままな遍路仲間がいる。それなのに、ウナギとハンバーグなら、どこでもいいらしい。そんな安定感がある。
 僕もハンバーグは好きだ。大阪市・千日前の串カツ屋さん「ひょうたん」でも、ハンバーグの串カツを食べる。
 牛肉の老舗「はり重」でも食べる。ただし、高級すき焼きで知られる大阪市・ミナミの本店ではなく、梅田・梅田の阪神百貨店の店。そこはカジュアルで、ハンバーグもある。ただ、他人に話す時は、「はり重に行って来た」とだけ言い、どこで食べたか、何を食べたかは、明かさないことにしている。
 ズボラ料理もハンバーグだが、少し手を加えた。アスパラは皮が固ければ、ピーラーでむき、サッとゆでる。根の方は小さな輪切りにし、ボウルに入れる。合いびきミンチ、細かく切ったタマネギ、パン粉、牛乳、卵といった普通のハンバーグの具材も加える。味つけは塩、コショウ、ナツメグ。よく錬って円盤状に成形する。上にアスマラの穂の部分を埋め込み、フライパンで焼く。途中で赤ワインをふって、蒸し焼きにする。
 ハンバーグは融通がきく。はり重だけでなく、フォルクスでもキャピトル東洋亭でも、気軽に注文できる安定感がある。だから、アスパラのようなものを入れても、十分に受け入れてくれる。(梶川伸)2024.09.11

更新日時 2024/09/11


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