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編集長のズボラ料理(709) チンゲンサイの豆鼓炒め

茎と葉の火の通り方が違うので、時間差をつけて炒める

 遍路仲間が月に1回集まっている。般若心経を唱えるわけでもなく、遍路の準備をするわけでもない。
 軽くビールと酒を飲む。それなら、遍路仲間ではなく、酒飲み仲間ではないか。そんな声もあるが、その通りである。。
 四国88カ所と比較をするのもおかしいが、僕らの集まりも結構長い歴史を誇る。2003年に遍路に行った仲間が中心だから、その歴史は20年を超える。途中でいったん途絶えたが、復活してからでも10年以上になる。
 遍路と同じように、集まるごとに印を押していればよかった、と思うことがある。その場合は朱印ではなく、酒印だろう。酒印帳は真っ赤になっていたに違いない。毎回、顔は真っ赤になっているので、それだけでもいいが。
 新大阪駅に近いリーゾナブルな中華料理店「小麦ランド」が、僕らの聖地だった。ところが新型コロナウイルスの影響を受けて、残念ながら閉店に追い込まれてしまった。以来、僕らは決まった店がなくなり、大阪市・梅田で集合して、いろいろな店をさすらっていて。居酒屋88カ所状態である。
 小麦ランドでは、随分と良くしてもらった。僕らは年寄りばかりなので、それほど食べるわけではなく、一品料理をいくつか頼んで、みんなで分けてビールのあてにした。店の人は親切で、「今日のお薦め」と言って、コース料理でしか出していないものも特別に作ってくれた。
 印象に残っているのが、空芯菜の豆鼓(とうち)炒めだった。空芯菜を炒めているだけのように見えるのだが、コクがあった。先日、大阪市・難波のシンガポール料理の店「梁亜楼(りゃんあろう)」でランチを食べた時、メヌーの1つに空芯菜炒めがあり、懐かしく食べた。
 こうなると、作ってみようとなる。しかし、豆鼓を知らない。「豆」の文字が入っているので、豆の水煮でも使ってみようかと思ったが、念のためにグルメの友人に聞いてみた。すると、豆鼓醤(とうちじゃん)のことで、中華材料の店などで売っているという。なーんだ、これは簡単。確かに瓶詰めを売っていた。
 小麦ランドと同じものでは芸がないので、チンゲンサイを使ってみた。チンゲンサイを茎の部分と葉の部分に切り分ける。フライパンにサラダ油をひき、スライスしたニンニクを加えて熱し、味と香りをつける。ニンニクを取り除き、代わりに干しエビを入れてチンゲンサイの茎も加え、豆鼓醤で炒める。火が通ったら、葉も加えてサッと炒める。
 あの時、水煮豆を使っていたら、全く別物になっていた。持つべきものは友。ただ、どんな味だったのか、水煮豆の方も食べてみたかったような気もする。(梶川伸)2024.01.19

更新日時 2024/01/19


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