編集長のズボラ料理(628) とろろハルサメ
友人に誘われて、ギター・マンドリンのコンサートに行ったことがある。友人の親類がメンバーの一員だった。
演奏曲目の中に、アニメ「となりのトトロ」のメドレーがあった。まず「さんぽ」.
「あるこう あるこう わたしはげんき♪」のおなじみの曲だった。すると友人は、一緒に歌い出した。そんな気楽なコンサートだった。ただ、僕には歌う勇気はなかった。
ある年末、コンサート「(大阪市)淀川区民の第九」を聴きに行った。指揮者は名の知られた人だったが、楽器演奏はシンセサイザーも使って計7~8人の簡易版。固苦しい演奏会ではなく、合唱のメンバーの中には、客席の家族に手を振っている人もいた。
「合掌」が始まると、指揮者が客席にも歌うように合図をした。僕としてはそれでも、歌う勇気がない。音痴だから、こればっかりは勘弁願いたい。
ギタマンのコンサートの方だが、「さんぽ」に続いたのは、「トトロ トトロ トトロ トトロ♪」だった。友人はまた歌っている。僕はまた歌わない。音痴のうえに、「トトロ」はどうも「とろろ」に結びつく。もし歌ったら、「トロロ トロロ トロロ トロロ」になってしまう恐れもあるからだった。
「とろろ」は、音の響きからしいてユーモラスだ。トロトロしているから「とろろ」なのであろう。「とろろ」の表現が定着してしまっているので、ヤマイモやらナガイモやら、もとになるイモの名前かすんでしまう。
ご飯にかければ、とろろ飯でし、麦飯なら麦とろとなる。ヤマイモご飯とは言わない。おつゆにすれば、とろろ汁となる。ソバにに乗せればとろろソバで、ナガイモソバとは決して言わない。ここにトトロが出てきたら、「トトロがトロロご飯を食べた」となる。ややこしくて仕方がない。
今回は高いヤマイモではなく、安い方のナガイモを使う。すりおろしてとろろにし、白い色を止めるために少し酢を垂らし、そうめんつゆと青ノリ、ワサビを加えてよく混ぜぜる。オクラは塩を少し入れて湯でゆで、輪切りにする。ハルサメは白だしを加えてゆでる。ハルサメは熱を取ってから器に入れ、上からとろろをかけ、オクラを乗せ、焼きノリの千切りを振りかける。
とろろはお好み焼きにも入れることがある。これはとろろお好みとは言わない。当たり前になっているからだろうか。居酒屋さんで、とろろと生卵を混ぜて焼いた料理を食べたことがある。とろろを焼くと、トロトロからフワトロに変わるのがおもしろい。(梶川伸)2022.10.20
更新日時 2022/10/20