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編集長のズボラ料理(617) 枝豆とジャガイモの春巻き

オレンジピール入りの¥チーズを多くすると、お菓子のようになる

 四国の遍路は、徳島県から始まって時計回りに一周し、香川県へと四国を巡る。かなりのお遍路さんは、また回る。つまり循環の思想が特徴の1つと言える。
 それは1年にもたとえられる。徳島県は春、高知県は夏、愛媛県は秋、香川県は冬。お遍路さんの中には、また徳島から回り始める人も結構いる。かく言う僕は13週目。100回を大きく超える友人もいる。うよく目が回らないもんだ。
 このグルグル回りは、太陽信仰に根差していると、僕は思っている。冬に眠りにつき、春に目覚める。それは蘇りに思想と言ってもいい。
 中学校の音楽の時間に、ハイケンスのセレナーデを習った。かすかな記憶では、僕らが歌った歌詞は「ポタリポタリつららも溶け」の春から始まり、冬まで続いた。高校ではビバルディーの四季を習った。やはり春から冬へ。「四季の歌」がはやったことがある。芹陽子が歌っていた。これも春から冬へ。
 人間の生活に四季は強く結びついている。特に日本人には。年度は4月から始まる。だから、新しい歳への象徴的な花として、桜が大好きなだ。
 食べ物はどうかと思ったら、春巻きを思いついた。本当は春巻きのことを書こうと思って、無理やり四季にこじつけたのだが。
 何で夏巻きではないのか。夏はあまり巻かない。巻くのは首を冷やすクールリンクくらいのものだ、食べ物ではない。冬はマフラーを巻くが、食事の時にははずすあくらいだから、食べ物とは縁がない。秋が抜けているが、思いつかないから書かない。
 春巻きは秋に巻いてもいいではないか。何で春に巻くのか、困った時のインターネットで調べてみた。すると、もともとは立春のころ新芽を出した野菜を巻いので、春巻きだという。何と素敵な語源。
 春に巻くのではなく、春を巻く。眠っていた植物が、春になって芽吹く。それを食べて、春を喜ぶ。ここにも蘇りの思想がある。
 枝豆を湯で、豆をさやから取り出す。ジャガイモは皮をむき、小さなしころ状に切って、レンジでチーンをして火を通す。4つ100円くらいで売っているチーズを何種類か用意する。僕はカマンベール、モッツァレラ、レモンピール入り3種類を使い、小さなさいころ状にして混ぜておく。これらを春巻きの皮に包んで、脂で揚げる。
 秋を考えていたら、秋撒(ま)き花の種が見つかった。春巻きのために、秋にまく。字が違うか。(梶川伸)2022.08.22

更新日時 2022/08/22


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