編集長のズボラ料理(794) レンコンとはんぺんのスープ
僕はどうも、食べ物に対する想像力が弱いようだ。名前を見てもどんな食べ物なのかわからなかったり、現物を見た時に勘違いをしていたことに気づいたりする。
遍路に行った際、松山市で「いかれんこん」なる食べ物を見つけた。ところが想像力不足で、どんな味なのかピンとこない。そこで買ったみた。味をつけた輪切りのレンコンと細切りのスルメを青いトウガラシと一緒に漬け込んであった。なあーんだ、であるが、これが思いつかない。
金沢にはたくさんの和菓子があり、食べてみたくなるものも多い。羽二重加賀れんこん餅をもらったことがある。ところが、名前だけでは。これもどんなお菓子かピンとこなかった。お菓子にレンコンの組み合わせが、そぐわなと感じたからだった。
それはなぜか。花びら餅という美しい名前の和菓子を初めて食べた時の衝撃が、いまだにトラウマとして残っているからだ。何でゴボウが挟んであるのか、どうしても理解できなかった。いまは、理解できないまま、おいしく食べている。
ところで、羽二重加賀れんこん餅はどんなものだったか。和紙調の袋に商品名と店の落款が入ったシールが張ってあった。袋を開けると、小さいながらも丁寧に編み込まれた籠が入っていた。これは可愛い。そしてその中に、一口サイズの羽二重餅が5切れ入っていた。羽二重餅の柔らかくでモチッと伸びる。中に細かく切ったレンコンが入っていて、コリっとした食感がある。2つの組み合わせは、初めての味わいだった。つまり、レンコンは味ではなく、食感だったと悟った。
そこで、レンコンの食感を生かして、ズボラ料理を作ってみた。頭で描いたのは、レンコンしんじょうの蒸し物。レンコンはすり下ろしたものをメーンにし、つぶしたはんぺんと卵の白身を加える。みじん切りにしたレンコンも加える。食感のためだ。よく混ぜ、ボール状に丸めて、しんじょうに見立てる。鍋で吸い物を作って、レンコンボールを入れる。ここまでは、作る前の、こうなるはずだという想像。
では、実際。レンコンボールはうまく丸まった。そう思った。鍋にだしをとり、みりん、酒、薄口しょうゆで味をつける。こちらの方は、失敗に心配はないので、想像通り。さて、レンコンボールを煮始めると、思い描いた方向とは違った展開にアなった。ボールはどんどん分解してバラバラになってしまったのだ。うーむ、カタクリ粉など、接着材料をもっと多くすればよかった。
仕方ないから、レンコンとはんぺんのスープと名前を変えることにした。見た目、「すり流し」といった見かけもあるし、みぞれ鍋のような印象もあるが、失敗作にその名前をつけるわけにはいかない。次回はボールを維持して、丸く収めたいものだ。(梶川伸)2025.04.10
更新日時 2025/04/10