このエントリーをはてなブックマークに追加

心にしみる一言(357) 二上山下ろしの風で冷たい

つららの下がった手水

◇一言◇
 二上山下ろしの風で冷たい

◇本文◇
 1年前、奈良県葛城市の當麻寺(たいまでら)奥院に、冬ボタンを見に行った。
寒ボタンと冬ボタンがある。寒ボタンは二季咲きの品種で、春の本番のほかに寒さの中で葉を落として小さな花を咲かせる。冬ボタンは一般的な春ボタンなのだが、温室で育てるなどして、冬に咲かせる。花は大きく、葉もつけている。
 當麻寺奥院では、浄土庭園と名づけられた庭に咲冬ボタンが咲く。庭は池を中心にして、たくさの石が配置されている。その石の間に20株あまり。ワラで作った雪よけの三角頭巾の中で、花を開いていた。
 寒い日だった。池には氷が張っていた。手水にはつららが下がっていた。それらを眺めていると、寺の人が声をかけてきた。それが取り上げた言葉だった。
 二上山は奈良県と大阪府の境の山で、寺は奈良側のふもと近くにある。六甲おろし、比叡おろしは知っているが、奈良にも同じように山から吹き下ろす風があり、それが寒さと冷たさをもたらる。そんな厳しさの中で咲くボタンはけなげに見えた。(梶川伸)2022.20.23

更新日時 2022/01/23


関連リンク