心にしみる一言(315) 2度と来てくれることはないかも知れないが、思い出してくださいと
◇一言◇
2度と来てくれることはないかも知れないが、思い出してください
◇本文◇
香川県の豊島(てしま)は、50万トンにも及ぶ産業廃棄物が不法投棄された島として知られる。島民の反対運動を支援するために、住民運動団体「瀬戸内海会議」のメンバーが島を訪れた時に同行したことがある。
交流会は公民館であり、総勢約80人が集まるにぎやかさだった。その歓迎ぶりだけでも、島民の人の良さがわかる。不法投棄はその辺をつけ込まれた結果でもある。交流の中で印象に残ったのが、取り上げた言葉だった。
席が近い人から話を聞いた。島の名前からもわかるように、米もよく取れる豊かな島だった。そして、「人間はのんびりしているし、内気」だと、自分たちにのことを分析した。豊かな島が人たちの優しさを育てたのだろう。
1番優しさを感じたのは、学校の先生に対する接し方だった。島に着いた時に歓迎し、在職中は大事もてなす。先生が転勤で島を去ることが決まると、必ず歓送会をするそうだ。船に乗り込むと、万歳を三唱して、テープを投げて送り出す。「2度と来てくれることはないかも知れないが、思い出してください」と。
翌朝、島を出る時、テープで送られた。一晩だけで、先生たちの気分を味わうことになり、島のファンになった。(梶川伸)2021.06.19
更新日時 2021/06/19