寺の花ものがたり
豊臣秀吉は天正15(1587)年、京都・北野天満宮で大茶会を開いた。この寺は宿舎の1つになった。その礼にと、秀吉が寺に贈ったのが五色八重散椿(ごしきやえちりつ...
古くから、隨心院(ずいしんいん)のあたりに咲く梅は、古名の唐棣(はねず)で呼ばれてきた。唐棣色とは白色を帯びた紅色で、唐棣には木蓮(もくれん)や庭桜の古名とす...
和歌山県・高野山の僧侶がこの寺を訪ねた時に、「よく鳥が鳴くね」と言ったそうだ。「私のように毎日ここで生活していると、気づかないんですが」とは、住職の永島龍弘さ...
京 都・大原野の冬は静かである。寺もまた、自然に溶け込んで静かだ。 「石庭をゆっくりと見たいという方が訪れる。リピーターも結構いる」と、住職の𠮷川弘哉さんは...
「4代そろっためでたい梅」。書院の前にある臥龍(がりゅう)の老梅のことを、住職の筑波常遍さんは言う。 江戸時代に京都の御所から移された。親は枯れて、根だけ...
花の見方には2つあると、住職の北川慈照さんは言う。1つは種類も数も多い豪華なものを楽しむ。例えば植物園。もう1つは、生け花のようなもの。「閑静な茶室で、竹やぶ...
春には100種1000株の牡丹(ぼたん)が美を競う。それに比べると、寒牡丹は20株ほどで、ささやかである。それも一斉に咲くわけではない。しかし、冬の境内ではす...
山門をくぐって、冬枯れの参道を登っていく。庫裏(くり)に着くと、南天(なんてん)の赤い実が目に入る。白壁を背景にして、たわわに下がる房は、実に鮮やかだ。 ...
寺を訪ねたのは、11月末の好天の日だった。30歩ほどの紅葉の気が、日を浴びて燃えていた。 江戸時代から明治時代にかけての女流歌人、太田垣蓮月尼が晩年を過ご...
「冬は花のない時期なのでありがたい」。住職の大谷康文さんは山茶花(さざんか)の木に感謝する。 庫裏(くり)の前に2本。どちらも柔らかなピンクの花で覆われる...