寺の花ものがたり(243) 九品寺(奈良県御所市)彼岸花=9月下旬~10月上旬
彼岸花(ひがんばな)は、境内よりも寺の周りに多い。
南北朝の戦いの時に、楢原氏が南朝に味方していた楠木正成のため、一族を引き連れて参戦した。その戦いに行く時、一族は身代わりに石仏を彫って菩提寺だった九品寺に奉納した。それが千体石仏として伝わる。
そんな寺だが、普段は静かなたたずまいを見せる。ただ、秋の彼岸のころは参拝者が多い。参拝の後は、寺の横の広場に向かう。彼岸花が密集しているので、みんなカメラを構える。
花を手前に置けば、背景に少しだけ、寺の伽藍が入る。反対を向けば、少し高い場所にあるので、赤いじゅうたんの向こうに、大和盆地を見下ろすことになる。盆地の向こうには、大和の山々。
黄色の彼岸花、白い彼岸花もポツンと咲いていて、赤一色に違う色を添える。ピンクのコスコスも。
広場に隣接して、棚田が広がる。黄色い田を、赤い彼岸花が縁取る。赤と黄色の段々ができている。農作業の人が点景として入る。のどかな秋。
もちろん、境内にも彼岸花はある。石仏を飾るように、ポツポツ咲いている。十徳園という庭園の池のそばにも。しかし、寺の周りの圧倒的な量には太刀打ちができない。彼岸花に縁取られた寺と考えればいい。
◇九品寺(くほんじ)◇
奈良県御所市楢原1188。近鉄御所駅から葛城ロープウェイ前行きバスで猿目橋バス停下車、徒歩で20分。0745-62-3346。奈良時代の僧、行基の創建と伝えられる。本尊は阿弥陀如来。境内自由。
(梶川伸)
更新日時 2020/09/28