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心にしみる一言(231) しんこうの花の寺なんです

高照寺のモクレン

◇一言◇
 しんこうの花の寺なんです

◇本文◇
 取材していて、思わず笑ってしまったのが、この言葉だった。ユーモアのある住職だった。
 寺と花の組み合わせで、「寺の花ものがたり」と題した記事を、毎日新聞で連載していた時期がある。掲載した94回は「マチゴト豊中・池田ニュース」のウェブでも紹介した。正式な取材はしていない寺も、印象記として写真とともにウェブで継続掲載している。
 取材の過程で、「関西花の寺二十五霊場」に所属している寺も訪ねた。兵庫県養父市、高照寺もその1つだった。モクレンの寺として知られる。
 奈良時代の開山と伝えられる古刹。6色8種類のモクレンが境内を彩る。古くからモクレンに包まれた寺だろうと想像しながら、参道を登った。
 住職にあいさつをし、取材の趣旨を説明した。その時に返ってきたのが、取り上げた言葉だった。話をつなぎ合わせて書いたが、正式に再現すると、まずは「うちは、しんこうの寺なんですが」だった。
 私は「しんこう」を「信仰」と解釈した。「そりゃあそうだろう」と思い、「はあ?」とあいまいな言葉を口にした。
 すると住職は「新興の花の寺なんです」。「しんこう」の解釈間違いは分かったが、「歴史のある寺なのに」と解せない顔をした。やっと住職は、「しんこう」の意味を説明してくれた。
 モクレンの木を本格的に植え始めたのは1992年。関西花の寺二十五霊場が組織されるのに合わせてのことだった。住職はこの霊場に仲間入りをしたいと考え、準備段階から参加した。
 ほとんどの寺は、昔から花の名所だったが、この寺は霊場会に合わせてモクレンの寺を目指した。だから「花の寺」の中では、「新興」だというのだ。
 平気で裏話をする。そのユニークさのために、思わず話に引き込まれてしまった。ただし、「もともとモクレンの木はあった」とも語ったので、大げさに話して、聞き手を楽しませようとしていたことも感じた。(梶川伸)2020.04.22


更新日時 2020/04/22


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