心にしみる一言(222) 孝標女の心でお祈りしたいのです
◇一言◇
孝標女(たかすえのむすめ)の心でお祈りしたいのです
◇本文◇
取り上げた言葉は、聞いたものではない。大津市の石山寺に行った際、参拝者が自由に書くノートにあったのを見つけ、それが印象に残った。
石山寺は紫式部が源氏物語の構想を練った場所とされている。新聞記者だったころに寺を訪ねた際、文章がうまくなることを願って、おみくじを引いた。しかし、結果は「末小吉」だった。安易におみくじなどに頼るな、ということだったのだろう。
同じような気持ちで参っている人がいるものだ、と思ったのはノートを見た時だった。「孝標女の心でお祈りしたいのです。いい論文ができるよう石山寺にお参りしました」。読んでみて、自分と比べてしまった。
孝標女とは、菅原孝標の娘で、更級日記の作者である。しかも、源氏物語に憧れていたことも、日記などから知らている。
それを踏まえてノートの書き込みを読むと、その具体的な記述が、思いの深さを表わしている。この人の場合は、安易な願いではなく、真剣な願いだったのだろう。おみくじを引いていたら、大吉で出てほしいと思った。(梶川伸)2020.02.07
更新日時 2020/02/07