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編集長のズボラ料理(363) 瓶詰めカニみそのパスタ

上に緑のものを乗せた方が見栄えがよかったかもしれない

 寒い時期に、カニのこうらに熱かんを注ぐ。こうらのカニみそをはしで少し溶かしてから、口に運ぶ。冬の海辺の宿の夜に憧れる。
 そんな経験は数えるほどで、最後は7年前の福井県敦賀市でのことだった。昔の同僚が住んでいて、年末の第九に出るから聴きにきてほしい、と誘いがあった。仲間で行ったのだが、目当は彼が奨めてくれた釣り宿で、カニを食べることだった。宿に入る前に、気比の松原に寄った。雨が降っていたので、傘をさしての見物だった。
 海を見ていると、傘の柄を持った左手にパチッという音がして、青い光が飛び散った。その直後に雷鳴。一緒に行った仲間によると、傘が逆さになったという。
 雷の直撃ではないだろうが、小さな落雷が何かの作用を起こしたのだろう。あわてて彼の車に飛び込んだ。くわばら、くわばら。危うく感電死するところだった。カニを食べず、こうら酒飲まずに感電死しては、死んでも死にきれないところだった。
 さて、宿の夜。小さな風呂に順番に入り、待ちかねた夕ご飯。感激のあまり、メニューはパソコンの中に残してある。
 刺し身、焼きが二、ゆでガニ、カニ鍋、天ぷら、サザエのつぼ焼き、カレイの煮付け。最後はカニ雑炊だった。しかし、なんと言っても印象に残ったのは、みそがたくさん詰まったこうらにカニの身を入れ、あつかんを注いで食べたことだった。
 カニで大満足したので、翌日は第九を聴かずに大阪に帰った。まずかったかなあ。
 カニのこうら酒は、いかにも本場っぽいし、通っぽい。窓の外に日本海が見え、雪が降っていることを想像してしまう。しかし、なかなか機会がないので、今回の料理を思いついた。
 今は夏。カニの時期ではないので、瓶詰めのカニみそを使う。本当は安いのでつかうのだが、みえを張って「冬ではないので」と言っておく。
 カニみそに生クリームを合わせ、そうめんつゆを少し加えてゆっくり熱する。パスタをシメジと一緒に、だしでゆでる。カニみそ生クリームと和えて、皿に盛る。
 後は目を閉じて、日本海の荒波と雪を思い浮かべればいい。冬の雰囲気を出す他面ために、クーラーでギンギンに冷やして。ただし、夏は雷が多いから、注意が必要だ。(梶川伸)2019.07.29

更新日時 2019/07/29


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