豊中・池田発ガンバルジャン⑥
共進精器――
豊中市の南西、工場が連なる原田地区の一角に、オートパーツフィーダという機械を作る共進精器がある。半導体部品や錠剤などの医薬品を、自動的に整列させ供給する専門性の高い機械だ。
社長の坂本栄希さん(68)が、同じ会社に勤めていた先輩3人とともに、当時の脱サラブームに乗って起業したのは1976年。当時は食べるのも難しかったという。「私だけ30代で、後は皆50代。師匠という感じでした」という仲間と、毎日午前2時ごろまで働いた。
起業当時は現場一本の職人。しかし先輩が病気で亡くなるなどして、坂本さんが社長となった。「経営のことはもちろん、書類の書き方も何もわからなかった」。必死に仕事を覚え、十二指腸潰瘍になった時も注射を打って休まず働いた。その甲斐あって、会社はバブル景気やパソコンの需要拡大にもうまく乗り業績を伸ばした。
しかし、その後の不景気や半導体事業の海外移転などのあおりを受け、ここ数年は赤字が続く。業績を支えるのは好景気時に研究開発した医薬品用の機器だ。直接体内に入れるものだけに基準も厳しく、他社をリードしている。「やりたいテーマは多く、今も余裕があれば研究開発費をあてたいが、零細企業にその余裕はないよ」と坂本さんは笑う。
従業員は11人。20代が多いのが特徴だ。目指すのは「個人商店方式」というシステムだ。「うちには標準規格がない。顧客の要望ごとに対応する」という会社の方針を、従業員個人単位で行うのだ。営業から見積もり、機器の設計、製作、納品、メンテナンスまですべてをまかなう。「ただの営業なら2年くらいで一人前になるが、ここまで出来るようになるには10年はかかる。そういう人材を育てたい」
「従業員は宝物。私より素質のある子はいる。もう少しがんばってくれるとうれしい」。子や孫を見るような優しい瞳で、坂本さんは従業員を見つめる。(礒野健一)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」第13号(2011年1月20日)
更新日時 2011/01/20