豊中運動場100年(73) 京阪神三都対抗陸上大会/神戸勢が圧倒し優勝
大正時代の大阪、京都、神戸は、街の様相も市民の気風も現代以上に異なっていた。それだけにお互いの対抗意識も強く、三都が競い合うスポーツ大会や対抗戦はことのほか熱を帯びた。
1916(大正5)年も押し詰まった12月24日。大阪毎日新聞社の主催で「京阪神三都対抗陸上競技大会」が開かれた。
年が明ければ日本初の国際大会となる極東オリンピックが東京で開かれるとあって、陸上競技への関心が高まっていた。関西には有力選手が多数いるうえ、3都市で勝敗を競う大会とあって、年の瀬にも関わらず豊中運動場は多くのファンで埋まった。
京都は同志社、三高、京都帝大、京都一中、京都二中、花園中、京都高等工芸、京都師範の8校から、大阪は大阪高商、大阪高工、大阪府立医大、北野中、桃山中の5校から、神戸は神戸高商、御影師範、関西学院など5校からの出場者が中心となった。大会は学校対抗戦の様相もあって、各校の派手な応援が飛び交った。
短距離で福井孝一選手(神戸高商)、中距離で佐伯巌選手(大阪高商)、長距離で加藤富之助選手(同志社)、投てきでは武中武重選手(神戸高商)といった全国レベルの選手が好成績を挙げる。有力選手の活躍が大会を盛り上げた。
一方、3都市の争いに目を移すと神戸勢の活躍が目立った。やり投げは1~3位を独占したほか、120ヤード障害、220ヤード障害、円盤投げ、走り高跳びでは1、2位を占めた。最後の競技となった1マイルリレーでは、神戸チームと大阪チームが壮絶なトップ争いを演じて、会場は興奮に包まれた。
都市別の得点は、1位3点、2位2点、3位1点(リレーは1位5点、2位3点、3位1点)で積算され、59点を挙げた神戸が優勝、38点の大阪は2位、35点の京都は3位になった。神戸高商の選手が中心になった神戸勢の圧勝に終わった。(松本泉)
※1ヤード=0・9メートル、1マイル=1・6キロ
100ヤード走 福井孝一(神戸高商) 10秒6
220ヤード走 渡辺一郎(同志社) 26秒2
440ヤード走 佐伯巌(大阪高商) 56秒
880ヤード走 佐伯巌(大阪高商) 2分14秒3
1マイル走 加藤富之助(同志社) 4分54秒3
5マイル走 加藤富之助(同志社) 28分9秒2
120ヤード障害 福井孝一(神戸高商) 19秒6
220ヤード障害 福井孝一(神戸高商) 30秒
半マイルレー 1位神戸チーム
1マイルリレー 1位大阪チーム
砲丸投げ 粕谷重造(大阪高商) 8.19メートル
ハンマー投げ 武中武重(神戸高商) 17.79メートル
円盤投げ 宮本恒太郎(関西学院) 26.58メートル
やり投げ 武中武重(神戸高商) 31.33メートル
投球 武中武重(神戸高商) 88.46メートル
走り幅跳び 鴻沢(北野中) 5.3メートル
三段跳び 武中武重(神戸高商) 11.4メートル
走り高跳び 青木真(関西学院) 1.48メートル
棒高跳び 日野俊夫(神戸高商) 2.5メートル
五種競技 有田志朗(同志社) 238点
=2016.09.12
更新日時 2016/09/12