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豊中運動場100年(66) 初の敗者復活戦/中等学校野球、鳥取中が制す

豊中運動場跡地に設けられた高校野球メモリアルパークには、近所の人たちが一生懸命手入れする四季の花がいつも咲きそろっている=豊中市玉井町で

 甲子園大会は1度負けてしまうとそれですべてが終わる。勝ち進まなくてはならない厳しいトーナメント戦だからこそドラマも生まれる。
 ところが長い高校野球の歴史の中で、敗者復活戦が導入されたことが2度ある。豊中運動場で開催された1916(大正5)年の第2回全国中等学校優勝野球大会で1試合、鳴尾運動場で開かれた翌年の第3回大会で2試合行われた。
 敗者復活戦は1回戦で敗れたチームの中から抽選に勝ったチーム同士が対戦した。大会に定着するかに見えたが、第3回大会で愛知一中が敗者復活戦からそのまま勝ち進んで優勝してしまい波紋を呼ぶ。「1度負けたチームが優勝するのはおかしい」という意見が続出したため、敗者復活戦は第3回大会限りで廃止になった。豊中運動場は、高校野球史でも珍しい敗者復活戦が取り入れられた大会の初めての舞台でもあった。
 第2回大会の敗者復活戦は2回戦があった8月18日の第4試合として行われだ。
 2回戦では第1試合で慶応普通部、第2試合で市岡中が勝利を飾ったのに続き、第3試合で和歌山中と広島商が対戦した。
 和歌山中―広島商は1点を争う好ゲームになった。和歌山中は3回表に1死2、3塁から中筋武久選手が、5回表には2死3塁から小笠原道生選手がそれぞれ適時打を放ち2点を先行する。一方で中盤まで今一つだった広島商の打線が7回裏に爆発。石本秀一選手の3塁打のほか適時打を集中させて一挙に4点を奪い逆転した。
 しかし和歌山中はすぐにひっくり返す。8回表に1死満塁からバント攻勢をかけ相手守備の乱れもあり3点を挙げて逆転。9回表にも敵失から1点を追加して猛追する広島商を振り切った。好打あり、好守あり、粘投あり、緻密なバント攻撃あり。鍛え上げられた両校の見応えのある試合となった。
 第4試合は敗者復活戦。1回戦で敗退したがともに抽選で勝った中学明善と鳥取中が復活をかけて戦うことになった。
 試合は終始鳥取中がリードした。1回裏に捕逸で1点を先制。4回裏には無死満塁の好機から敵失や連続二塁打で6点を奪取し一気に突き放した。しかし中学明善もあきらめなかった。投手の疲れが見え始めた6回表、1死2、3塁から上野選手の適時打で2点、続く梅野選手も適時打で1点を返して追撃、7回表にも1点を追加して3点差に迫った。
ところがこのあたりで日没時間が迫り豊中運動場に薄い闇が広がり始める。この日の第1試合が3時間を越える長時間になったことがここで影響した。5点差を追う中学明善の攻撃となった9回表には白球がほとんど見えなくなるほどの闇に包まれてしまった。本来なら日没コールドゲームになってもおかしくなかったが、中学明善は「最後までやりたい」と主張。鳥取中もその意を受けて試合を続行した。
 大阪毎日新聞は「薄暮に及んでも遂に勝負を決するまで戦ったのは共に意気を壮とすべし」とたたえた。(松本泉)

▽8月18日
【2回戦】
和歌山中 001010031=6
広島商  000000400=4
【敗者復活戦】
中学明善 000003102=6
鳥取中  10060002×=9
=2016.06.07

全国中等学校優勝野球大会 鳴尾運動場 愛知一中 慶応普通部 市岡中 和歌山中 広島商 中学明善 鳥取中

更新日時 2016/06/07


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