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編集長のズボラ料理(75) カキのオイスターソース炒め

カキは水分を取っておく

 この冬もまた、行ってしまった。しかも2度。岡山県備前市・日生(ひなせ)のカキオコのことである。
 カキオコとは、カキクケコのカキ間違いではない。いや、書き間違いではない。カキのお好み焼きのことをいう。カキは柿ではなく、海の方の牡蠣である。カキばかり出てきて、どうも書きにくい。何でもかんでも縮めればいいというものではないが、最近になって僕もやっと書き慣れてきた。
 そもそもは、遍路仲間に連れていってもらった。日生にはカキオコの店がたくさんあるが、駅から1番遠い「きまぐれ」という小さな店だった。カキが大量に入っていて900円だから、安いと誘われた。冷静に考えれば、大阪からの運賃がかかり、「カキ食えば金が減る減る法隆寺」とは思うのだが、「お得」と言ってきかない。
 10人ほどでカキ遍路に出かけた。行ってみると、鉄板の前のカウンターは5席しかないが、なかなかの人気店だった。店の外に並んだ。雨が降っていたので、傘をさして。店の奥に部屋があり、そこの使わせてもらったが、全員が食べ終わるのに2時間半かかった。
 それから毎冬、きまぐれ通いが続いている。今年は5年目で、もうレジェンドの域に達している。
 この冬の1回目は、レジェンドをまた積み重ねることになった。友人たちと、岡山市の犬島に行った。精錬所の跡を活用した美術館を見てから、岡山市内の北部にある安い温泉宿に泊まる計画で、予約してあった。美術館を見てから、船に乗って市街地の方に戻ろうとした。午後3時前だった。友人の携帯が鳴った。ここから、レジェンドが始まる。
 電話は宿からだった。「本日で営業中止です」。何と。突拍子もない内容で、あ然とした次の瞬間、怒りがわいてきた。ところが電話の主は従業員で、「私たちも今、出勤して知ったんです」と言う。だとすると、従業員も被害者なのに、わざわざ電話をして教えてくれたわけで、怒りは同情に変わり、やがてあきらめに達した。
 さあ、大変。そこから宿探しである。仲間の1人が「温泉がいい」とダダをこねるので、携帯電話で近くの温泉宿に次々、電話を入れた。ところが、なぜか満室ばかりで、やっと4軒目で空室にありついた。兵庫県赤穂市の赤穂温泉だった。
 本来2日目は、みんなが行ったことにない岡山県の北部を目指すことにしていた。ところが、赤穂からでは無理。そこで、割と近い日生に行って、きまぐれに寄ることになったわけ。僕のカキオコにはカキが12個入っていた。仲間は「安い、安い」と喜んでいた。
 しかし、冷静に考えてみる。やっと見つけた宿も満室に近く、空いていたのは値段の高い部屋だった。当初の2倍以上もした。宿がつぶれなかったら、カキオコを食べていなかった。しかも僕の場合、もう1度きまぐれに行くことも予想されていた。だから、カキオコは安くないのである。
 フライパンにオリーブオイルをひき、ニンニクを入れて香りをつける。カキに軽く小麦粉をまぶし、フライパンで焼くようにし、最後にオイスターソースをかけて、さっと炒める。カキを取り出した後のフライパンでエノキダケも炒め、両方を皿に盛る。カキのカキ油炒めだが、書きにくいので、オイスターソース炒めと書いた。(梶川伸)

カキオコ

更新日時 2014/02/27


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