身近な生き物たち⑯ 赤阪下池のツバメのねぐら
ツバメは子育てを終えると、秋の訪れとともに南へと渡りを始める。渡りの前には集団でねぐらを形成する。関西では高槻市道鵜(どうう)町の淀川右岸に4万羽余りが集まるが、豊中市立第二中学校前にある赤阪下池にも数年前から1万羽を超えるツバメが集まっている。
7月27日、豊中市民環境会議アジェンダ21自然部会が開催した観察会に同行した。赤坂下池に到着した午後6時、まだ池にツバメの姿はない。代わりに近くの宮山春日神社をねぐらとするカラスが、中学校の木や防球ネットに多く留まっていた。「カラスはツバメの天敵。カラスが帰るまではあんまり来ない」と、近所の人が話してくれた。
午後7時を過ぎ、日が暮れて残照になるとツバメの数が増えてきた。そう思ったら、もう大群になって飛び交っていた。空を見上げると、視界に数十羽は見て取れる。電線には、えんえん続く16分音符のようにツバメが留まっていた。まさに圧巻の光景だ。自然部会によると、この日のツバメは約6500羽。これから秋口にかけて数はもう少し増えるという。日の入り直後の時間に訪れれば、8月下旬ごろまで観察できる。
ただ、この環境がずっと保障されているわけではない。ねぐらにはヨシ原が必要だが、14000羽が確認された2010年の3割程度の広さだ。かんがい用ため池である赤坂下池の機能を守るため、ヨシを刈り取ったからだ。池の維持管理にも費用はかかり、自然保護との両立は簡単ではないが、まず現場を見ることから始め、多くの人の知恵を集めて良い方策を導き出したいものだ。(礒野健一)
更新日時 2012/08/07