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身近な生き物たち⑳ 刀根山高校生物エコ部

松枯れのため伐採したアカマツから、原因とも言われるセンチュウを見つけようと顕微鏡をのぞく部員と松本教諭(右端)

 豊中市刀根山にある大阪府立刀根山高校の敷地には、生徒たちが“裏山”と呼ぶ小高い丘があり、里山林が残っている。裏山を含め、校内には約300種以上の草木が確認されている。
 刀根山高校はもともと、大阪大学薬学部の跡地に建てられたため、テンダイウヤクやヒトツバハギなど、その薬草園で育てられていたと思われる植物も生育している。豊中市内では希少種のアキノキリンソウやシュンランも見られ、春には日本在来種のシロバナタンポポ、カンサイタンポポも咲き誇る。
 植物種が豊富ということは、それをエサにする昆虫も豊富ということだ。チョウやトンボ、カブトムシなど、校内で採集された昆虫は100種を超える。テニスコート前のビオトープでは、猪名川流域で減りつつある水草や貝を保護育成していて、メダカやエビも繁殖し、トンボも5種類以上が自然繁殖している。
 校内の豊かな自然を調査し、維持する活動の中心となっているのが、同校の生物エコ部だ。副部長の辻航己さんは「調べると裏山にも近所にも、意外と自然が残っていた」と驚く。顧問の松本馨教諭は、「校内の貴重な林や草地を教育活動にもっと活かしてゆきたい。また、地域の生物多様性を支えている場所なので、これを維持することは地域社会に対する責任でもある。」と話す。
 取材した日は、活動場所の教室に、校舎の屋上緑化で栽培した、たくさんのサツマイモが並べられていた。「今度、裏山一斉清掃の時に焼き芋もするんです」。そう笑う顔が、刀根山の自然を担っている。(礒野健一)

更新日時 2012/12/13


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