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編集長のズボラ料理(755) アスパラの昆布じめ

あまり長くコンブにはさんでおうくと、塩辛くなるので、ほどほどに

 コンブでしめた食べ物は、どこか雰囲気がいい。その響きも、そして味も。
 コンブじめよりも、コブじめの音がいい。コブよりも昆布の方が字の印象がいい。でも、昆布と書くと、コンブと呼んでしまいそうだ。そこはズボラのいい加減さ、昆布と書いて、コブと呼読んでもらうことにする。できれば、コブではなく「こぶ」を思い浮かべてもらうとにする
 昆布じめといえば、魚を思うのは当たり前のことだ。京都市伏見区のコンブ屋さん「おこぶ北清(きたせ)」の小さな店で、仲間と酒を飲んだことがある。コンブの料理をいくつもつまみにした。
 つぶしたアボカドをつけて食べる揚げコンブ▽コンブだしのジュレを加えたポテトサラダ▽豚のコンブ巻きの揚げ物▽コンブだしのよくきいた揚げ出し豆腐。でも刺し身の昆布しめにはかなわなかった。ともかく、しめるのが一番。
 秋田県の乳頭温泉の鶴の湯に、仲間で泊まったことがある。山の芋鍋が囲炉裏のフックにかけてあった。ほかにも地元料理がたくさん並んでいて、仲間でワイワイ話しながら飲んで食べた。鍋以外に何があったのかは、ほとんど覚えていない。酒を飲みすぎたせいだが、それでもニジマスの刺し身の昆布じめは覚えている。昆布じめは酒よりも強し。
 昆布じめで相性がいいのは、魚だと思い込んでいた。ところがある時、アスパラ農家をテレビ番組で紹介していて、びっくりした。農家の奥さんが、育てたアスパラの昆布じめを作っていたからだ。
 きっとおいしいアスパラだから、それができるのだろう。既成概念を打ち砕かれた僕は、自らにそう言い聞かせた。
 その昔、高松市勤務だったことがあり、香川のものを食べさせる居酒屋さんに世話になった。高松を離れて何年かして、その店を訪ねた時、女将が出してきたのが香川県のアスパラ「さぬきのめざめ」だった。まず、生で。次は焼いて。生で食べられるようなアスパラなら、昆布じめにしたって大丈夫だろう。
 うちの近くのスーパーでは普通のアスパラしか売っていない。それでも、やってみるか。 
 アスパラの根に近い方はピーラーで皮をむき、サッとゆでる。昆布に軽く酒をふり、2枚の昆布の間にアスパラをはさみ、ラップを巻いて、半日ほど置く。
 アスパラ農家でもなく、ブランドアスパラでもなく、普通のアスパラでも何とかかなるもんだ。いや、食べた時に酒を飲んでいたから、覚えていないのかもしれない。(梶川伸)2024.09.03、

更新日時 2024/09/03


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