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編集長のズボラ料理(611) 素揚げナスの黒酢漬け

ナスは好みの大きさにカット

 黒酢。何だか印象がいい。普通の酢より、1段上の感じがする。
 一般的には、黒のイメージは良くない。事件で「クロ」と言えば、容疑が濃いことだ。腹黒いといえば、悪い人間に使う。
 勝負では、「シロ・クロ」つけるという言葉がある。相撲の星取表が典型だが、勝ちは白星で負けは黒星となる。どうも黒は分が悪い。
 黒は夜や闇に結びつく。闇は不気味さがつきまとう。闇取引やら闇討ちやら、闇がつく悪いイメージの言葉はいくらでもある。最近の新聞では「政界の闇」のような「○○の闇」は、常套句ように使われ、この世の中は闇だらけだと警鐘を鳴らしている。
 夜の反対は昼。昼は白いのかと疑問に思ったが、白昼という表現があるから、白いのであろう。
 夜が好きな人もいるが、僕は夜に弱い。マージャンでそれが証明される。僕はもともと弱いから、カモとしてよく誘われた。新聞社に勤めていたので、新聞休刊日には前夜から会社の保養者に泊まり込んで、徹夜に近い状態で立て続けにやることもあった。いわゆる徹マン。
 その保養所はすき焼きが名物で、それしかない。それを食べてからゲーム開始となる。初めは何とか持ちこたえて白星と黒橋が拮抗するのだが、やがて夜の闇が深まってくると、黒星だらけとなり、ついには暗黒の底に沈んでいくのだった。僕にとって、夜→闇→黒の流れがあり、黒は基本的に好まない。
 しかし、周りには黒好きな人がいる。ある芸術家は、いつも黒の上下を身に着けている。遍路仲間の女性は、「黒が1番おしゃれ」と言い切る。僕は蛍光色の黄色のようなTシャツが好きで、そんな色を着ていると、のけぞるからおもしろい。
 そんな僕だが、イカスミのパスタは食べる。見た目は悪いのに、ナポリタンやミートソースよりもイカスミを食べる方が。通ぶって見えるからだ。
 イカの黒作りも食べる。普通の塩辛よりも、どこかおしゃれに見えるからだ。そして、黒酢。これは響きからしていい。
 ナスを縦に4つに切る。それを油で素揚げする。鍋に室津、砂糖、酒、しょうゆを入れ、煮立たせる。火を切ってナスをいれ、しばらく漬け込む。
 イカスミを食べると、葉が黒くなる。ということは、のどを通って胃に行き着くわけだが、腹黒くはならないのだろうか。(梶川伸)2022.07.11

更新日時 2022/07/11


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