編集長のズボラ料理(809) はんぺんのツナマヨはさみ焼き
はんぺんは中途半ぺんな、いや中途半端な食べ物だだ。いつもそう思う。
白いので豆腐のようなものかと思うと、もっと柔らかくてホワホワしている。「豆腐の門で頭売って……」という下品は言い回しがあるが、はんぺんならもっともっと柔らかな弾力があるので、頭を打つこと自体が不可能だ。。
この2つは、原料も全くちがう。豆腐が大豆なのに対し、はんぺんは魚のすり身。それならかまぼこと一緒じゃないか、と思う。「ゆでかまぼこ」という表現もあるようなので、少なくとも親類同士ではある。
しかし、柔らかさに雲泥の差がある。はんぺんはわざわざ空気をたくさん入れて作るようなので、僕らは空気を食べているようなもんだ。歯ごたえがない。
名前からして、はんぺんにはピリリとしたところがない。漢字で書くと、半片、半弁、半平の3種があり、どうもはっきりしないらしい。しかも、どれも「半」だけは共通しているから、自己主張のなさを象徴している。駿河の国の半平が考案したとう説もあるのようで、すべてが半人前の食べ物だと言える。
白い練り物なら、しんじょうがある。京料理でも椀(わん)もの使われ、上品さを演出する。こちらは立派に自己主張しているではないか。ところが、はんぺんにはそんな気位を感じない。つゆを吸い込ので、おでんには使われる、しかし、自らを食べてもらおうと言う熱意もない。だから、おでんの具の人気ランキングでは、低位に留まっている。椀ものに進出しようという冒険心がないのもうなずける。
食べ方にも筋の通ったところがない。和風の食材ではあるが、人気があるのはバター焼きで、これでは京料理にはならない。最後にしょうゆを垂らして、何とか和の体面を保とうとするが、潔くない。でも、中途半ぺんな食材だから、使いやすいという利点もある。
はんぺんに包丁を入れて、2枚に切る。ツナの缶詰を開け、水分をのぞいて中身をボールに入れる。マヨネーズを加え、レモン汁、しょうゆを垂らして混ぜ、これをはんぺんに塗り、サンドイッチ状にする。フライパンにバターを入れて熱し、はんぺんの両面を焼く。
これも洋風の味わいを加えた食べ物。僕は中途半端な人間だと自認していいるので、
親しみを感じる食べ物でもある。歳のせいで、歯も悪くなっているし。(梶川伸)2022.07.01
更新日時 2022/07/01