編集長のズボラ料理(556) クレソンワンタンメン
会社で同期だった男が、高松市に1人で住んでいる。暇だから時々、大阪に遊びに来た。今はコロナでごぶさただが。
来ると昼間から飲む。彼はマグロのにぎりが好きだから、安いすし屋さんに行く。腐れ縁だから付き合う。
ある時、大阪駅近く店で、うどんもついたサービスセットをあてに、2人で瓶ビールを1本飲んだ。昼食時間なので、長居ができない。そこで、すし屋さんの激戦区、大阪市・天神橋商店街へ移動。すし政、奴寿司、春駒の順で御三家を回った。
お腹がいっぱいなので、マグロのにぎりだけを頼んで、瓶ビールを2人で1本だけ飲む。すし屋遍路と名づけて、終われば次へと回った。昼のすし巡れは4軒で見事結願した。
夕方がチづいたので、続いて夜の部に移り、500g1000円ほどの焼き肉屋さんがビールを飲んだ。後はおぼろ。
僕も暇だから、時々高松へ行った。彼のお気に入りの立ち食いのすし屋が、JR高松駅のビルにあって、マグロの刺し身のお任せコースを頼む。かまトロや頭の身も入っていて、それなりの値段がするが、たまに会うのでおごってくれる。
その後は彼の家に行ってき飲む。問題が1つ。テーブルの上を、食べ物に関連するものが覆っている。それをかき分け、1人あたり20センチ四方を確保し、缶ビールとカップ酒、それにつまみを置く。
この狭さで話すので、広い世界のことなどに話が及ぶはずがない。テーブルの上には、必ずインスタントラーメンが置いてある。それを見て、卑近で小さな世界の話題で時間をつぶす。インスタントラーメンは何が好きか?
彼は「明星チャルメラのバりカタ麺(めん)だ」と言う。僕は「マルちゃん正麺醤油(しょうゆ)味や」と対抗する。結論が出ないまま飲み続け、後はおぼろで寝ることになる。
翌日、帰宅する時、彼はテーブルの上のバリカラ麺と、四国のインスタントラーメンを1つずつ土産にくれた。自分の舌に自信を持っているのだ。
次に彼の家を訪ねた時、僕はマルちゃんと、地元の天理ラーメンのインスタントラーメンを土産にした。こっちだって、自信を持っているだ。
今回はエースコックのワンタンメンを使った。ヒラヒラのワンタンの皮が入っているだけで、得した感じになるので、時々5袋入りを買う。何かアレンジしたくなって、思いついたのが、クレソンを乗せることだった。何とズボラな料理。
そういえば、土産にしたラーメンの評価を聞いていない。決着をつけに行かねば。(梶川伸)2021.10.27
更新日時 2021/10/27