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編集長のズボラ料理(536) ウリのヒスイ煮

ヒスイ色を残すように気をつける

 僕の好きな食べ物は、我ながら変わっていると思う。1番好きなものは白ご飯。このコーナーでも書いたことがあるし、友人にもよく言っている。
 そのことが極めて変わっているというわけではない。ご飯は主食だから、ほとんどの人が好きだと思う。ただ、「好きな食べ物は?」と聞かれて場合、たいていはおかず:の方を選ぶので、わざわざ1番にする人は少数派だろう。それでも日本で1万人はいるのではないか。
 僕が2番目に好きなものは、細く切った大根で、しょうゆをかけ、カツオ節をふり、ご飯と一緒に食べる。1番・ご飯、2番・細切り大根となると、日本で100人ほどでに減るはずだ。
 3番目に好きなものは、ウリを縦半分に切り、皮をゼブラ状に切り取り、軽く塩をした後、薄いくし切りにしたもので、しょうゆをかけ、カツオ節をふり、ご飯と一緒に食べる。1番・ご飯、2番・細切り大根、3番・薄切りウリとなると、日本でも1けただと確信している。
 食べ物に関しては、安上がりな人間だと、我ながら思う。ただ、仲間と居酒屋さんに行った時には、役に立つ。刺し身の盛り合わせを頼む。その中で1番好きなのは、刺し身のツマだからだ。他のメンバーは残そうとし、僕は食べよううとするから、うまい組み合わせになっている。
 それで皿が空っぽになるかというと、そうではない。マグロの赤い色がついていると、その部分は残す。大根はしょうゆをつけるまでは、けがれのない純白であるべきなのだ。それが、大根好きのこだわりである。
 大根はよく買うので、いつも細切りばかり食べているわけにはいかない。でも大丈夫、いろいろな食べ方がある。大根おろし、漬け物。ふろふき大根、おでん、薄切りにしてゆでてバジルペーストと和える大根ジェノベーゼ、煮た大根のバルサミコつけ焼き……。さすが、ご飯の次ぐ地位を占めるだけの懐の深さがある。
 その点、ウリは困る。薄切りのほかによく食べるのは、漬け物しかない。それでは3番手としての威厳に欠ける。そこで、以前に何かで見たヒスイ煮に挑戦した。
 ウリは縦半分に切り、種の部分を取り除く。皮はすべて切り取り、食べやすい大きさに切る。濃いだしを取り、鍋でウリを煮る。味つけはみりんと白だし。ゆっくりと煮ふくめる。
 なぜ、昔のウリ料理を覚えていたのか。それは「ヒスイ煮」というきれいな言葉ののせいだった。だから、色が濁らないように白だしを使う。見た目はトウガンに近いが、少し野菜の青臭さを感じる。比べて思う。トウガンを薄切りにして、しょうゆとカツを節で食べたらどうだろう。4番目に食い込めるだろうか。(梶川伸)2021.08.25

更新日時 2021/08/25


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