編集長のズボラ料理(541) 野菜の豚肉巻き
豚のバラ肉が好きだ。塊の三枚肉もいいが、薄切りは使いやすいから、さらにいい。
奈良県民がこよなく愛する精肉店「福寿館」に時々行く。近鉄電車で2駅目にある近鉄百貨店奈良店に、テナントとして入っているからだ。
そこでシャブシャブ用に細長い豚肉を買う。牛肉の薄切りでもいいが、豚肉を選ぶのはひとえに、バラ肉のせいだ。見栄をはずせば、安いのが大の理由ではあるが。
薄切り肉はロースもバラ肉も、数枚ずつ並べて、ビニールのシートに挟んで売っている。それをそれぞれ数シートずつ買う。
シャブシャブをする時には、参加者がまず1シートずつを皿に取り、シートを開いてて、シャブシャブする。豚肉がなくなれば、新しいシートを皿に乗せ、またシャブシャブする。
こうすれば、豚肉の争奪戦は起きない。自分より目上の人、目下の人に遠慮しなくてもいい。自分の豚肉がはっきりしているので、自分の好みとなる。シャブでもいいし、シャブシャブでもいいし、シャブシャブシャブでいい。他の参加者の介入がないから、ゆったりと食べられる。これを平和のシャブシャブという。
1つだけ、問題がある。予備のシートはいつも、バラ肉の方から減っていく。脂身のうまみによるところが大きいと思う。
お好み焼きは「豚玉」が王道で、具は豚バラに限る。店で時々、牛玉を頼んでいる人を見るが、これは邪道である。まれに、イカ玉の人がいるが、これはもっての他である。お好みには豚肉が焼けたカリカリさと、脂身のうま味が必須なのだ。
料理の中で、お好み焼きだけは名人の友人がいる。やはりバラ肉で作る。ついでに焼きそばを作ることがあり、これにも豚バラを使う。焼いた後は、豚バラだけ取り出してしまう。つまり、だし代わりにしている。これが豚バラ愛の究極ではないか。僕は、そんなしょうもないことはしない。
ホウレンソウはさっとゆでる。ニンジンは短冊に切り、柔らかくなるまで煮る。エノキダケは石づきを切り取っておく。みそを酒と少量の白だしで伸ばし、砂糖、白ゴマを加えて混ぜ、たれを作る。ラップを敷き、その上に豚バラを好少しずつ重ねながら、長方形を作る。その上にホウレンソウ、ニンジン、エノキダケを乗せ、ラップを使いながら巻きずし状にする。フライパンに油を薄くひき、豚バラロールを回しながら焼き、最後にたれをかけて、さらに回転させて焼く。
野菜を肉で巻くのは定番ではある。ここでも、主流は豚バラだろう。ただし、友人のように、食べる段になって、豚バラを取り除くことはしない方がいい。具がバラバラになる、(梶川伸)2021,09.12
更新日時 2021/09/12