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心にしみる一言(331) 集まる場所がなくなるから、別の場所で再開しよう

再開した時の大歩危

◇一言◇
 集まる場所がなくなるから、別の場所で再開しよう

◇本文◇
 2014年3月7日、大阪市淀川区、阪急十三(じゅうそう)駅の西側で火事が発生した。通称「しょんべん横丁」と呼ばれた居酒屋街で、36店舗1500平方メートルが焼けた。
 その中に、居酒屋「大歩危(おおぼけ)」があった。大歩危は徳島県の名所の渓谷の名前。徳島県出身の年配の女将1人が切り盛りする小さな店だった。
 徳島県出身者がまるで自宅にでも帰るように集まる店だった。私も最初は徳島県出身者に誘われていった。徳島市に若いころ、5年間住んだことがあたったので、なじみになっていった。
 大歩危は4月8日、焼けた店から約500メートル離れた場所で、再び店を開いた。お披露目会に誘われて、参加した。大火からわずか1カ月というスピードに驚き、女将に経緯を聞き、さらに驚きは増した。
 火事の夜、常連客が何人も焼けた店に姿を見せた。「集まる場所がなくなる」と言う人がいて、別の場所での再開を女将に勧めた。2日後には常連客の1人が、新しい店の場所を見つけた。焼け残った食器などは、客がみんなで運び、再開にこぎつけたそうだ。
 女将は「火事の後、もう店をやるのは無理なので、主人と一緒に旅行でもしながら暮らしていこう、と話していたが、みなさんに背中を押され」と、感謝の気持ちを伝える言葉は止まらなかった。(梶川伸)2021.09.11

更新日時 2021/09/11


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