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心にしみる一言(322) 小指の痛み

沖縄戦で亡くなった人の名前を刻んだ平和の礎(いしじ)

◇一言◇
 小指の痛み

◇本文◇
 フェイスブック仲間が、キョウチクトウの写真を投稿し、「原爆の歌」の歌詞に触れていた。「ふるさとの街やかれ ……今は白い花咲く…」の「白い花」を調べ、キョウチクトウだということがわかって、新聞記事に書いたことがあるという内容だった。
 この歌は僕が大学生だったころ、デモなどでよく歌われていた。「戦争と平和」を考える歌だった。そんな歌は、もう1つあった。それは「沖縄を返せ」。
 団塊の世代の私は、戦後2年目に生まれた。両親は広島出身だがから、原爆は新聞記者になって、根底にあるテーマの1つだった。
 一方、沖縄とは縁がない。しかし、戦争と平和を考える上では、無関心でいられないテーマだった。新婚旅行は復帰3年目の沖縄に行き、嘉手納基地の周りを見て回った。
 平成時代に変わる前には、大阪に住む沖縄出身者を訪ね歩き、「大坂の沖縄」と題した小さなインタビュー記事を連載した。沖縄戦で自決した壕(ごう)「チリチビガマ」の前にモニュメントを作った彫刻家、沖縄独立運動の人など。沖縄へのこだわりのつもりだった。ところが……。
 ある人のインタビューで聞いた言葉が忘れられない。それが「小指の痛み」だった。沖縄戦、米国の占領、米軍基地に囲まれた生活を、日本全体としては小さな痛みとしてしか感じていない、との主張だった。それは私を含めた本土の人間に向けたものだったわけだが、それから30数年たった今も、変わっていないような気がする。(梶川伸)2021.07.31

更新日時 2021/07/31


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