心にしみる一言(299) 川の水で洗って食べなさい
◇一言◇
川の水で洗って食べなさい
◇本文◇
5月の連休を利用して、奈良県天川村の古い民家に泊まったことがある。村出身の友人がセットしてくれた。彼は山菜採りの名人だった。
林道を車で走った後、車を置いてせせらき沿いに歩いて山菜を採りに行った。昼ご飯のおかずにするためだった。
何を摘んでいいのかわからないので、友人の指示に従った。まずはモミジダケ。これは分かりやすい。イハモミジのような葉が付いた草で、群生している。おひたしや天ぷらにする。ミツバダケもたくさん摘んだ。
友人は崖を上り下りしながら、タラの芽を探す。タラの木は枝が1本高く空に伸び、その先に一つ芽がついている。その芽を採る。
その間にこちらはウドも教えてもらい、引き抜いた。土がついている。友人は「川の水で洗って食べなさい」と言い、その言葉に従った。
冷たいせせらぎで洗う。真っ白な茎が輝いている。地中にできた自然の恵み。鼻に近づける。ハッカのような香りが立つ。外側の皮をはずして、かじってみた。シャキッとしているが、ヤマイモノような滑らかさもある。地中にあったので、えぐみはない。口の中に春が広がった。
周りの若葉が美しい。せせらぎにはアメノウオ(アマゴ)が泳いでいた。もう20年になるが、忘れられない春の白だった。(梶川伸)2021.04.01
更新日時 2021/04/01