人
台風が近づいた日だった。男は四国八十八カ所の二十三番札所、薬王寺のそばの宿で目を覚ました。雨は降っていたが、風はそれほど強くなかった。少しためらった後、意を決...
ブーツの好きな男だった。死ぬまでそれは変わらなかった。女はあきれもし、あきらめもしたが、妻の立場としては、最期を看取る役割は果たしたつもりだ。 瀬戸内の小...
サン・テグジュペリの「星の王子さま」の文庫本を、男はかばんから取り出して見せた。時々、持ち歩くのだと言う。 家には箱入りのハードカバーのものがある。40年...
独立行政法人国際協力機構(JICA)の実施する青年海外協力隊として、アフリカのザンビア共和国に派遣される庄村優さん(25歳、豊中市曽根南町)が12月25日、豊...
長い別居生活だった。夫との話し合いはやっと決着して、間もなく離婚が正式に決まる。女にはどこか解放感があった。 そんな時期に、東北で集まりがあった。女は気心...
男は突然、家を出た。 その日は日曜日だった。男はポツリと言った。「1人になりたい」 前夜、男の帰りは遅かった。心配した女が携帯電話を鳴らしたが、応答は...
午前8時になると、携帯電話に男からのモーニングメールが入る。長い文面に、いつもうれしい言葉があった。「永久(とわ)の人」。その一語を確認して、女も返信した。そ...
再婚が決まると、男は「どこに住む?」と尋ねた。女は言った。「この家に私が住みます。模様替えはしますが」 明るい日差しの2階建ての家だった。そこで、男の亡く...
東京の便利さ、これに勝るものはない。男はそう思っていた。東京以外は嫌な人間で、よく冗談を言った。「電化製品なら東芝で、日立もだめ。車は日産で、トヨタはもっての...
番傘みどり川柳会は10月5日、みのおサンプラザ8階大会議室で創立50周年記念大会を開いた。みのお虫供養協賛、田中螢柳エッセイ集「古都暮色」の出版記念を兼ねた句...