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編集長のズボラ料理(456) 豚肉とキュウリのみそ炒め

みそにサンショウを加えてもいい

 夏の京都の風物詩が、キュウリだった時期がある。ちょっと下火になってはきたが、まだ名残はある。
 キュウリ1本に割りばしをさし、それを氷水で冷やしていた。ただそれだけのことだが、観光客がよく買って食べていた。何か変ではないか。コウロギじゃあるまいし。
 確かに氷水の中の緑色は、涼し気な感じはする。しかし、しょせんはキュウリである。売りは冷たいだけではないのか。冷たさも味のうちかもしれないが、ひんやりを楽しもうとするなら、購入後1分以内に食べ切らないと、暑い京都では常温に戻ってしまう。
 京都の食べ物にしては、せわしすぎる。冷たさが目的なら、四条河原町の永楽屋で宇治金時氷を食べればいいのだ。往々にして並んでいるが、それをちゅうちょするなら、ガリガリ君アイスでいい。
 僕ならガリガリ君より鹿児島の白くまくんアイスにする。丸永製菓というまぎらわしい名前で、昔は関西ではなじみがなく、食べているとよく、「どこのアイス?」と聞かれるから、面倒くさいので「丸永」と「森永」の中間のような言い方でごまかしていた。
 つまり「ま」と「も」とが混じったような発音をする。そうすると相手は「森永」と勘違いし、それで納得し、その話題はそこで終わる。「丸永」とはっきり言ってしますと、「どこの?」「おいしい?」と聞かれ、それに答える会話が続き、うっとうしかった。それも昔のことで、今は認知されているので、「マルナガ」とはっきりと自己主張する。
 キュウリ1本が100円という手軽さが受けるのだろうか。しかし、キュウリ1本なら、そんなもんだろう。ブランドキュウリなどあまり聞かないし、フルーツキュウリのような高級品があるわけではない。自宅で使うのは3本120円くらいのものだ。
 それならガリガリ君でいいじゃないか。どちらも棒に刺してあるわけだし。
 僕なら白くまくんだが、その場合はちょっと注意がいる。スティック状のものなら安いが、フルーツのたくさん入ったカップのものを買うと、キュウリより高くなるからだ。
 もう1つ腑に落ちないのは、漬け物屋さんの店先でも売っていることだ。漬け物にしてからはしを刺して売るのが、漬け物屋さんの王道ではないか。
 キュウリの皮をまだらに切り取り、軽く塩をしてしばらく置く。歯ごたえのあるくらいの細切りにする。豚肉を適当に切る。この2つを油で炒める。みそに砂糖、みりん、だしの素、香りづけのしょうゆを混ぜ、これで味をつける。
 棒つきキュウリをさんざんこき下ろしたので、今回のズボラ料理はそのおわびも兼ねた。僕も食べてみたこともあるし。白くまくんを裏切って。(梶川伸)2020.10.17

更新日時 2020/11/18


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