編集長のズボラ料理(809) チンゲンサイの変形八宝菜
僕ら定年後クッカーにとっては、料理をして食材の色を留めるのは、ことのほか難しい。特に紫。
ナス紺という言葉がある。紺の漢字を使うが、僕には紫の濃い色に見える。初夏には親類が必ず水ナスの漬け物を送ってくれる。この紫もいい。
水ナスが好きだと言いふらしていたら、2人から届くことになった。1人は弟。もう1人は弟の奥さんのお母さん。お母さんは大阪市に住んでいるから、産地の泉州にも近く、なじみがあるからだろう。
弟は神奈川県に住んでいるので、水ナスとの関係は不思議だった。謎を解く鍵は、生産者にあった。全く同じ農園から送られてくる。きっと、奥さんの実家から送られたナスを弟が気に入ったに違いない。そこで、僕にも同じ味のものを送ることになったのだろう。
僕は水ナスが大好きだから、ダブっても構わない。それどころか、たくさん食べられるので、ありがたいことだ。1週間から10日時間差で届くから、食べ続けるにはちょうどいい。
だから、どちらの家にも、ダブっていることを伝えていない。今年も2カ所だったから、まだバレていないらしい。シメシメである。
京都の漬け物屋さんのナスも、紫が美しい。ところが自分で浅漬けの素を使って漬けてみても、くすんだ色になってしまう。プロはたいしたもんだ。
ナスに比べて、葉物野菜の緑はまだましだ。生のサラダなら、何の苦労もない。しかし、料理未熟人の僕の場合、料理をすると落とし穴がある。
前日はチンゲンサイの緑を生かして八宝菜を作ろうとした。豚肉、エビ、イカなどともチンゲンサイを炒めたが、色々混ぜたことや味つけの具合もあって、全体として茶色にくすんでしまった。チンゲンサイの緑もさえなかった。そこで気づいたのは、紫よりも難しいのは、透明だということだった。
ここであきらめるのが、ズボラの本性だが、今回は違った、再挑戦してみた。
チンゲンサイは茎の部分と、葉の部分に切り分ける、冷凍のエビ・イカミックスを解凍し、水分を取る。豚肉を用意する。切り落としが使いやすい。キャベツ、ハクサイは食べやすい大きさに切る。パプリカは細切り、タマネギはくし切り。
鍋に少量の水を入れ、油を少し加えて熱し、サッと豚肉をゆでて取り出す。鍋を洗ってから、少量の水を入れ、ほんの少し塩を加え、エビ・イカをサッとゆでて取り出す。鍋を洗い、また少量の水を入れ、油も加えて熱し、チンゲンサイの茎をサッと煮て取り出す。
鍋に水を入れ、鶏ガラスープ、塩、砂糖、みりん、コショウ、油を加え、食材すべてを煮る。水分はひたひた。最後に溶いたカタクリ粉でとろみをつける。
一定程度の透明感は出た。ただ、これで八宝菜と言っていいのだろうか。(梶川伸)2025.07.04
更新日時 2025/07/04