編集長のズボラ料理(365) 大葉イモサラ
イモサラ、いや、今さらのイモサラダである。
ジャガイモのサラダは、マヨネーズでなければいけないのか。そんな疑問を持ち続けて30年になる。その疑問のきっかけは、大阪市・北新地のはずれにある居酒屋さん「大輝」で食べたイモサラだった。
金沢出身の輝子さんが大阪で店を出したので、大輝というらしい。ある日のイモサラは、輝子さんに言わせると、「マヨネーズの代わりに卵の黄身を使った」だった。
いわば、イモサラ・カルボナーラ。しかし、そんなしゃれた店ではないから、イモサラ。せいぜい、ポテサラ。
それから長い年月がたつが、実は半信半疑なのだ。輝子さんの言葉は自由奔放すぎる。言い換えれば、いい加減過ぎる。
輝子さんは平気で年齢を変える。30年ほど前に、ある情報誌に店が紹介され、年齢は確か50歳くらいだった。20年ほど前、別の情報誌に掲載されたが、年が変わっていない。
10年ほど前、また別の情報誌に出た。ついに実際の年に近づけた。それでも少し、サバをよんだ。最近になってやっと観念して、実年齢で話すようになった。今年で95歳になるのではないか。
惣菜をたくさん作り、大皿に乗せてカウンターに並べる。すじ肉も得意料理の1つだが、「松坂牛」と言ってはばからない。卵は「伊勢神宮の卵」らしい。これはどうも怪しい。そうだとすると、ありがたいイモサラということになる。
これはどうか。亡くなった漫才師、横山やすしさんと店でビールの飲み比べをした。朝まで飲んで、ビール瓶を数えると、100本を超えていた。ほんまかいな、と思うが、どうも憎めない。
だから、イモサラ・カルボナーラも、たまたまその日だけ、マヨネーズがなく、卵の黄身で混ぜたのではないか。そうなると、輝子さんでもマヨネーズ・イモサラの牙城はなかなか崩せなかったということになる。でも、崩してみる。
ジャガイモをゆで、適当につぶす。大葉をたくさんみじん切りにして、ジャガイモとまぜ、塩・コショウをふり、バージンオリーブオイルをかけて、さらに混ぜる。ゆで卵を作り、細かく切って上に飾る。この卵は、伊勢神宮のものではない。(梶川伸)2019.08.12
更新日時 2019/08/12