このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(341) カブとアサリのスープ

白い色が食欲を誘う

 白と黒では、白を選びたい。犯人かどうかの話ではない。食べ物のことだ。
 例えばイタリアンの店で、イカすみパスタは食べるとする。すると大変な決断がいる。くちびるは黒い口紅、歯がおはぐろになるからだ。
 決断するの決め手はたった1つ。テーブルに紙ナプキンが大量に置いてあるかどうかだ。もしなければ、ハンカチが少なくとも1枚は使い物にならなくなる。
 イカの黒づくりは少しはましだ。僕の場合、ご飯のおかずというよりも、酒のあてにする。その場合、歯が黒くなったらビールで洗い流せばいいが、残る黒がある。そんな場合は、テクニックが必要となる。
 居酒屋では紙ナプキンではなく、布のおしぼりが出る。紙なら口をふいて黒くなったとしても、クチャクチャに小さくしておけば目立たない。おしぼりはそうはいかない。口をふいて黒くなった方を素早く裏向けにして、テーブルの上に置く。日ごろの練習の成果が試される。
 ただし、このテクニックは1回しか使えない。2回口をふくと、表裏とも黒くなり、隠し切れない。
 白か透明かでは、白を選びたい。白はエキスの色と確信しているからだ。
 例えば、焼き鳥屋さんで鶏の定食を食べるとする。「鳥せい」にも行く。ここの鶏のスープは透明だ。それに対して、「正起屋」のBランチの鶏スープは真っ白だから、これにひかれる。
 大阪・梅田の地下街の正起屋にも、灘波の地下街の店にも何度も行ったが、目的はただ1つ、Bランチのスープなのだ。焼き鳥屋さんだから飲む店でもあるが、そのために入ったのは、友人に誘われた1回しかない。
 中華料理で白湯(ぱいたん)スープが出てくると、もう決まりである。シジミの吸い物も同様。アサリも同じ。上品にすましたハマグリのおすましよりも、真っ白けの方が得をした感じになる。
 アサリは鍋で煮る。水は少なめで酒も加える。アサリの殻が開き、だしが出て白くなったら火を止める。あくは取る。アサリを取り出し、殻を取って身だけにする。
 だしに水をつぎ足し、だしの素(僕の場合はイオンの天然だしパックかつお味)も加え、皮をむいで適度な大きさに切ったカブを煮る。ここでもあくを取る。カブが柔らかくなったら、アサリの身を鍋に戻してさらに煮る。最後にミツバを散らす。食べる時、紙ナプキンもおしぼりもいらにない。(梶川伸)2019.04.15。

更新日時 2019/04/15


関連リンク