編集長のズボラ料理(332) 焼き肉・玉子豆腐丼
ウナギを食べるとする。その場合、うな丼にするか、うな重にするか。これは悩ましい。
毎日新聞の現役時代、ウナギの好きな先輩がいた。昼ご飯の際に誘われて時々、会社に近い菱東という店に行った。
ウナギは高い。しかも昼ご飯。できれば安いうな丼を頼みたいと思う。しかし先輩は高いうな重の方を頼む。仕方ないから、僕もいやいや従う。
時には3ランクのうち、「松」を頼むからたまらない。「え~」と一声あげて先輩の様子をうかがい、「竹にしとこか」と言うのを松、いや待つ。言わなければ、いやいや×2で従う。
もう15、16年も前の話。その後、値段はウナギ上りとなり、サラリーマンの昼ご飯とは、縁遠いものになってしまった。そう考えれば、あの時にいやいやでも食べておいてよかった。
牛肉の場合、吉野家に行っても困ることはない。牛丼はあるが、牛重はない。牛皿だとか牛鍋といったものがあるが、牛丼屋でそんなものを食べるのは邪道だから、注文する客がいれば、白い目で見ておけばいい。
店のカウンターで、「牛丼並」と頼む。ただ「並」といっても、「上」や「特上」があるわけではない。あるのは、「大盛り」と「特盛り」だけで、食べたい客は食べればいいのだ。
吉野家には松竹梅の区別もない。70年安保世代としては。その平等性を高く評価する。
ただ、ウナギも始めたようだ。食べたことはないが、うな重しかないらしい。なぜ、「丼」屋さんなのに、うな丼はなぜないのだろうか。「重」は持ちにくしいし、隅っこがたべにくではないか。きっとウナギという高級感が、「重」という重みを求めるのだ。
そう考えると、何も考えなくていい牛の丼がいいではないか。「1億総中流化」のかけ声で育ってきた段階の世代としては。
丼にご飯を入れ、スーパーで買ってきた玉子豆腐を軽くつぶして、上に乗せる。ついているつゆもかけておく。焼き肉用の肉に市販のたれをつけて、フライパンで焼く。それを上に乗せる。
これはやはり、丼で食べるのがいい。第一、「重」の器など、うちにはない。(梶川伸)2019.02.12
更新日時 2019/02/12