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編集長のズボラ料理(322) ツクネイモのバターぽん酢焼き

もう少し厚く切った方がよかった

 今回もまた、愛媛県宇和島市の元同僚から送ってくる野菜の話である。段ボール箱に詰めてあり、以前は夏ならキュウリとゴーヤ、ピーマンばかりだった。冬なら大根とカブくらいのものだった。
 定年後の暇つぶしに畑作業を始めたのだが、経験を積んできて、収穫物の種類が増えてきた。だから僕も彼のことを、「ファーマー」と呼び始めた。
 当初は畑を借りていた。それではファーマーとは言いがたい。とこが暇だから最近、高知県の実家まで車で2時間かけて通い、親が持っていた畑にまで手を出している。住む人がなくなり、家に風をいれるために時々行ってはいたのだが、畑の作業の方が主になった。ここまでくれば、ファーマーと呼んでもいいだろうと考えた。
 彼には農作業に没頭できる環境がある。会社をやめてから、携帯電話を手放した。だから実家でも、畑仕事に専念できる。
 実家にはもう、テレビもないのではないか。それで泊まることのあるようで、そうなると、もうファーマーの粋を通り越し、ファーマー仙人といってもいいのではないか。
 もらう野菜がバラエティーに富んできて、前回はニンニクやユズも入っていた。サツマイモもあって、味がよかったので、電話で話した際に、「また送ってや」と頼むと、それは彼の友人が作ったものだという。期待外れである。ファーマーには至らず、マアマア止まりかもしれない。
 前回は得体の知れないイモも入っていた。サトイモのようで、サトイモでない。ベンベン。サトイモにしては根のようなものがいたるところに生えている。ヤマイモのようで、ヤマイモでない。ベンベン。ヤマイモにしては、形がやや長めのズングリムックリである。といって、ナガイモのようで、ナガイモでない。ベンベン。長さが短かすぎる。
 さて、どうして食べたものか。火は通した方がいいだろうが、ヤマイモ・ナガイモ系統なら、煮てしまうとその特徴を生かせなくなる。そこで、焼くという無難な方法を採用した。
 皮をむき、輪切りにする。片面には縦横に包丁の切れ目を入れる。全部切れてバラバラにならないように、箸2本を横に添添えて切るといい。軽く塩、コショウをふっておく。フライパンでバター焼きにする。両面を焼き、最後にぽん酢をたらして、さらに軽く両面を焼く。
 作ってしばらくした時、彼が自宅から固定電話でかけてきた。イモの名前を聞くと、ツクネイモだった。しかし、売っているものと比べると、形が良くない。それなら、マアマアファーマーにも達していないかもなあ。そう思ったが、口には出さず、静かに彼の成長を見守ることにした。
 できたのはツクネイモのバター・ぽん酢焼きだった。ただし、ナガイモでもかまわない。(梶川伸)2018.12.26

更新日時 2018/12/26


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