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編集長のズボラ料理(294) マグロのショウガじょうゆ焼き

中の赤みが美しいように焼く

 無難な食べ物というものがある。マグロもその代表格の1つだろう。
 旅に出て宿に泊まると、刺し身にはたいていマグロがつく。マグロは嫌いな人が少なく、無難だからである。
 マグロが獲れない場所でも、マグロは主役のように、刺し身皿の上で振る舞っている。時には、直方体を維持しながらも、さいころのように分厚く切ってあって、威厳を見せつける。
 高松市に住んでいたころ、瀬戸内海の魚料理にこだわるなじみの居酒屋さんに入ると、大将が怒りまくっていたことがあった。香川県が観光キャンペーンで、旅行会社の人らを招いたことに関してだった。立食パーティー方式で、香川県の名産品も用意してあったが、刺し身はマグロがドーンと出ていたそうだ。
 「讃岐ではマグロは獲れん」。怒りに押されて、瀬戸内の小魚の刺し身を注文してなだめた。本人がパーティーに出ているわけではなく、参加した人から聞いただけで、これである。
 では、香川県のPRになぜ、マグロなのか。無難だからに違いない。
 すし屋さんに行くと、アオリイカとマグロばかり食べる友人がいる。その友人と、マグロを食べに行った。大阪市・梅田の近畿大学水産研究所という店だった。近畿大学の経営で、自慢の養殖マグロを食べさせる。オープンしてしばらくたっていたが、人気は継続中で、1時間近く並んで待った。
 養殖の成功までは、大変な苦労だった。成功したのでいいものの、何でそこまでして。それは売れることが分っている無難さからであろう。並んでまで食べる人もいるのだから。
 それにしても、よう並ぶわ。僕もだけど。成功物語の本「近大マグロの軌跡」まで読んだうえで並んだのだから、筋金入りの無難大好き人間だと自己分析する。
 豚肉のショウガ焼きは、会社勤めの人の昼ご飯の店では、鶏のから揚げとともに鉄板の定食2トップの座を占めている。これも無難さのゆえだと思っている。
 そこで、無難×2を作る。短冊になった刺し身用無難なマグロを用意する。しょうゆ、みりん、酒、おろしショウガを混ぜた無難なたれを作り、マグロをしばらく漬けておく。たれの無難さの大きな要素はショウガなので、千切りのショウガ加えてダメ押しをする。フライパンにサラダ油をひき、マグロを千切りショウガと一緒に焼く。表面が焼けたら取り出してカットし、皿に盛る。
 しょうゆ、ショウガがきいているので、食べる時の飲み物はビールが無難である。(梶川伸)2018.02.24

更新日時 2018/02/24


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