編集長のズボラ料理(292) キャベツのペペロンチーノ
大阪では「素うどん」というが、香川県では「かけうどん」という。うどんだけで、特別トッピングをせず、つゆをかけて食べる。愛想がないうどんのように見えるが、実は讃岐うどんの食べ方の王道である。
香川のセルフうどんの店に行くと、注文のほとんどは「大」「中」「小」か、「1玉」「2玉」「3玉」と短い。かけうどんが前提になっているからだ。
いくら「かけ」とは言っても、刻みネギは入れる。これは、うどんに対する礼儀であって、トッピングや具とは認定されない。
それにおろしショウガを入れる。ここで間違って七味でも振りかけようものなら、うどん県民への仲間入りは許されるはずもない。
うどん県民はうどん自体が好きが好きで、突き詰めればうどんの玉が好きなのである。つゆだとか、トッピングなどは二の次と思っている。大阪では「素うどん」と小声で言うが、香川では「かけ」は胸を張って言う。
そんなうどん環境で、「キツネうどん」などと頼むと、店の客に「フフン」と鼻であしらわれる。「天ぷらうどん」を頼めば、「そんなものはない」と冷たく店員にあしらわれる。天ぷらうどんにする場合は、かけうどんを頼んで、別にトッピングとして天ぷらを頼むのが、うどん県のルールとなっている。
そんな香川に住んで、昼ご飯はうどんに徹した。せっかくだから、うどん県民に仲間色しようとしたのだ、しかし、うどん県民の実力を見せつけられたことがある。
県庁に近いうどん屋「竹清」に行った時のことだ。僕は力強く1玉に抑え、代わりにゲソとゆで卵の2つの天ぷらをトッピングした。ところが僕のすぐ後の男性客は気負うこともなく「5玉」と声をかけ、トッピングはせず、粛々と食べていた。その潔よさとすがすがしさに、思わず頭を下げた。
そばの場合、「素そば」とは言わないで「かけそば」という。最近は国会や霞ヶ関でもはやっている。「素ラーメン」はないことはないが、その場合は「ラーメン」とだけ言う。
スパゲッティーは「素パッゲティー」とは言わない。ではそんなものがないかと言えば、実はある。ペペロンチーノがそれに近い。オリーブオイルでニンニクを炒め、タカノツメを加えて、スパゲッティーをからめる。その単純さが素うどんに近い。
「素」をさらに広げて、キャベツに応用した。フライパンにオリーブオイルを入れ、ニンニクのスライスとタカノツメを加えてゆっくり温める。ベーコンを細長く切ったものも炒め、最後にざく切りのキャベツを一緒に炒める。コショウは少しふる、
ベーコンは使ったが、このくらいは「素」の許容範囲だろう。ズボラ料理の2回目で「キャベツのアンチョビ炒め」を紹介したが、これも3分あればできるズボラ料理だと自負している。(梶川伸)2018.01.30
更新日時 2018/01/30