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編集長のズボラ料理(262) 焼きレンコンまんじゅう

おろしたレンコンには好みのものを入れる

  定年後はよく散歩をする。暇だからである。金もかからないし。
 散歩に行くと、同じ人に時々出会う。たいていは僕と同じ年寄りだ。相手も暇だからだろう。
 出会うと会釈する。何度か出会うと、あいさつをする。よく出会うようになると、簡単な会話もする。
 やがて情報交換が始まる。カワセミを見られる場所とか、ヌートリアが住んでいる川の場所だとか、どこのヤマモモの実が大きいだとか。
 さらに進むと、モノのやり取りに発展することもある。グミをもらったこともある。ヤマモモを差し出されたことがあったが、家のすぐ近くに摘みやすい木があるので遠慮した。
 散歩コースは概ね、東西南北の4方向で、それにバリエーションをつける。北へ行くと、研究所地区を通って田んぼに行く。まれに、農家のおばちゃんに野菜をもらうから、積極的に行ってみようと思う。
 東に行くと住宅街を通って田んぼに出て、川沿いに歩くことが多い。ここはコース取りによって、いろいろな表情を見せる。
 南に行くと、2つの公園を通る。朝歩けば、ラジオ体操をしている人たちにたくさん出会う。当然、みんな年寄りだ。
 西に行くと、池がある。冬は鳥が渡ってくる。カモが多く、バンもいる。初夏から秋の中ごろまで、スイレンの池となる。薄いピンクと白の小さめの花を無数につけるから、初夏にはしょっちゅう行く。ついでに、アルペンローゼという店でパンを買う。ただ、真夏になると、水が臭いを発するので、池は避けてパン屋だけに行くこともある。
 東コースには、それほど広くはないが、ハス畑がある。農家の人には出会わないので聞いたことはないが、お盆用のハスのつぼみ、花を取るためのものではないかと想像する。レンコンを取るためではなさそうだ。
 散歩コースを進んでいるうち、迷路に入ってしまったようで、やっとこさ目指したレンコンに行き着いた。レンコンには穴があるので、ともかく詰めてみたくなる。ごく自然の欲求である。
 自分ではやらないが、カラシを詰めたカラシレンコンは大好きだ。居酒屋さんで覚えたのは、貝柱を詰めたレンコンフライだ。いろいろ詰めてきたが、今回はレンコンの穴にレンコンを入れてみる。何のこっちゃ。
 レンコンは皮をむき、一部を厚さ3ミリほどの輪切りにして、サッと塩ゆでする。残りはすりおろし、少し酢をいれて黒くなるのを防ぐ。卵、カタクリ粉少し、白だし少し、刻みネギ、青ノリ、刻んだサンショウの葉など好みのものも加え、よくかき混ぜる。フライパンに油をひいて熱し、おろしたレンコンを円盤状にして乗せる。輪切りレンコンをそれぞれの上に置いて少し押さえ、穴をおろしたレンコンでふさぐ。両面を焼き皿に盛る。
 2種類のレンコンの食感を同時に楽しむ。それだけのことで、大したものではない。穴があったら、入りたいくらい。(梶川伸)


更新日時 2017/06/11


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