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編集長のズボラ料理(260) ジャガイモのチーズ焼き

焦げは食欲を誘う

 焦げると価値の上がるものがある。焼き魚もそうだ。その代表格は、先のサンマだろう。皮が焦げて、真っ黒けになっている方が、おいしく感じる。脂がのっているほど焦げるから、真っ黒けはおいしさの証明かもしれない。
 カツオのたたきもそうだ。もし問題があるとしたら、ワラで焦がすか、段ボールか、ガスの火かの選択だけだろう。焦げは前提になっている。
 釜飯や炊き込みご飯にしてもそうだ。ウスイエンドウや マツタケやタケノコのような繊細な炊き込みご飯でも、少し焦げた底の方が取り合いになる。わざわざ白だしを使ったり、塩とコンブだけで味をつけたりして、上品さを目指しても。焦げと上品さは、正反対の関係にあるのに、つい。
 中華料理のお焦げ料理など、その最たるものだ。わざわざご飯の焦げを作り、それにあんをかけて食べる。
しかしながら、焦げに対する欲望を抑えていたこと時期がある。1970年ごろ、焦げのベンツピレンが、がんを発症させる可能性があるとされたからだ。それでも、焦げが食通っぽくみえることがあるので、見栄を張って、空豆を皮ごと焼いて食べてはいた。しかし、いわば蒸し焼きで、焦げてはいない中身を食べて、ごまかしたのだから、ベンツピレンの影響を大きく受けていてといってもいい。
 ところが20年ほどたって、その説は覆された。それからは、ますます焦げに傾斜していった。その1つがチーズだった。
 チーズが焦げてパリパリしたのは、洋風せんべいの感がある。時にはわざわざフライパンで焦がして、それを使うこともある。これは結難しいし、第一落ち着きのある人にしかできないことを実感した。
 広島のお好み焼きはまず、生地を薄く焼いてその上にキャベツを乗せる。それならばと、チーズを薄くパリパリに焼いて、その上に炒めたナス乗せようと思った。フライパンをゆっくり熱し、チーズを乗せて薄く伸ばすことにした。
 弱火すぎたのか、チーズがなかなか溶けてこない。落ち着きがなくない、つい待ちきれずに、少し火を強めた。その途端、チーズが急速に溶け始め、あわてて火を切ってしまった。溶けただけで焦げはできない。仕方がないので、ナスの上に溶けかけチーズを乗せるはめになった。その時以来、チーズを焦がす際は、技術不要のものに限っている。
 ジャガイモをゆでて皮をむく。ジャガイモが熱いうちにバターを加え、塩、コショウを振ってつぶし、マッシュポテトを作る。パセリのみじん切りを混ぜてから、円盤状に成型する。その上にあるとろけるチーズ、さらにスライスチーズを乗せて、オーブンで焼き、チーズは少し焦がす。わざわざそうするのだが、特に技術が必要なわけではない。イラチでも大丈夫。(梶川伸)2017.05.15

更新日時 2017/05/15


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