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編集長のズボラ料理(247) 牛肉の茶碗蒸し

裏ごしをした方が当然いいが、面倒くさいとよくかき混ぜただけにしてしまう

 男3人、女3人の遊び仲間で、湯快リゾートの温泉宿に泊まった。場所は兵庫県新温泉町の湯村温泉だった。早坂暁さん作、吉永小百合さん主演の「夢千代日記」の舞台になったことで知られる。
 湯快リゾートにしたのは、安いからだ。機転のきく仲間がいて、早めに申し込み、新大阪から往復の専用バス代が無料になった。宿代は8100円。そこでまず1万円ずつ集めて、それで2日間を賄おうと思った。
 問題は昼ご飯と酒である。1日目はちょっと欲が出た。バスが寄ったレストラン200円引きのセットがあり、「これはお得」となった。値引きはあったものの、1000円で、自由になる会費の半分以上。「しまった」と思ったが、食べた後の祭りだった。
 夜はバイキング。当然酒類を頼む。女組はほとんど飲まないので、どうせ割り勘だと思い、男組に欲が出た。まずビール。さらに、宿お薦めの地酒を飲み進めてしまった。どうも足がでそうだ、と思ったが後の祭り。
 2日目の昼は反省して、粗食と決めた。「荒湯」という温泉が湧いている場所を、昼食会場にした。小さな川から石段を7~8段上がったところにある。メーン料理はゆで卵。卵はそば店で買い、ネットに入ったまま熱い温泉の中に吊るした。まずいことに雨が降っていて、荒湯から30メートルほど離れた東屋のいすに座って待った。待つこと10分。雨の中を全速力で走り、ゆで卵を引き上げてきて食べた。
 いくら粗食とはいえ、卵1つで満腹にはならない。実はトウモロコシを家から持ってきていた。それを卵のネットに入れ、温泉の熱湯につけた。重いのに持ってきたのだが、よく見ると店にも売っている。な~んだ。
 卵以外は、川のそばに別のゆでる場所が設けてある。また全力で走り、引き上げて食べた。雨が強くなり、濡れる量は増えた。
 次はソーセージで、また同じ方式。最後はサツマイモだった。重たいのに、家から運んできた。ところが店にも売っていた。「な~んだ、みんな同じことを考えるんだ」である。
 サツマイモをゆでるのは時間がかかる。40分ほど東屋で待ち、走って取りに行った。すると、川が増水して危険になり、川原への石段に立ち入り禁止のロープを張る最中だった。係りの人にお願いして、何とか入れてもらい、大慌てでイモを持って帰った。服はビショビショである。粗食は苦労するものである。
 結局、会費は足りなくなり、計3000円を追加徴収するはめになった。女組に酒代を出してもらうのはしのびないので、男組が1000円ずつ負担した。
 2日目の昼の粗食は分かっていたので、前夜のバイキングはみんな思いっ切り食べた。僕はイクラとローストビーフをガバガバと。しかし、「これは」と思ったのは、但馬牛の茶碗(ちゃわん)蒸しだった。いたってシンプルで、早速ズボラにいただいた。
 牛肉の切り落としを白だしにしばらくつけ、味がついたら取り出して、キッチンペーパーに挟んで白だしは取り除く。だしをとって冷やす。卵は茶碗1つに小さめのもの1つの割合でだしに加えて、よくかき混ぜる。茶碗の底に、牛肉を入れ、その上から注ぎ、レンジでチーンをする。
 具は牛肉だけ。但馬牛のようないい牛肉は、切り落としでも味がいいことがわかる。実は僕以外の遊び仲間は、バイキングの茶碗蒸しを食べていない。「茶碗蒸しなんか」と、見下した思いがあったに違いない。問題は具の但馬牛である。ガバガバ食べるローストビーフに但馬牛を使っていたとは考えにくい。そうなると、但馬の温泉で但馬牛を食べることができたのは、茶碗蒸しだけではなかったか。そのことを仲間に話し、優越感を味わった。ウシウシ。(梶川伸)2017.03.04


湯村温泉 早坂暁 夢千代日記

更新日時 2017/03/04


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