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編集長のズボラ料理(186) ハルサメとイカのチャプチェ風

味付けは辛みのものを混ぜると、チャプチェ風になる

 僕はよく近鉄奈良線に乗る。鶴橋駅でドアが開くと、無性に降りたくなる。焼き肉のにおいが、電車の中まで入ってくるからだ。
 鶴橋は焼き肉屋さんが密集している。その臭いは、駅周辺の1キロ四方を覆う勢いだ。というわけで、時々誘惑に負けて電車を降りてみる。降りれば焼き肉や屋へと向かうことになる。
 高架の駅から地上に降りてすぐの場所にも、焼き肉屋さんは多い。もちろん、そこにも行く。しかしよく世話になる韓国料理の店は、鶴橋の商店街を抜けて行く。商店街は入り組んでいて、道を覚えるのは大変だ。しかし、回を重ねているので、体が全自動で動く。
 10年ほど前、毎日新聞の文化教室が韓国料理講座を始めることになった。責任者は仲良しで、相談を受けた。文化教室にはちゃんとした厨房(ちゅうぼう)がないので、韓国料理店でやりたいと言う。ついては、講師になってくれる人の店を知らないか、というものだった。
 僕は2つの店を紹介した。1つは先に書いた鶴橋の韓国料理店。もう1つはJR天満駅から行く店だった。2店に責任者を案内し、僕個人的には鶴橋の店を薦めた。
 後日、韓国料理講座が開講した。講師は天満の方の店の女将だった。責任者に理由を聞くと、「鶴橋の方は、生徒さんに店までの道順を教えにくい」との答えが即座に返ってきた。何となく納得した。韓国料理への道で最も重要なのは、店への道なのだ。
 焼き肉は何人かで食べて、盛り上がらねばならないのが暗黙のルールとなっている。盛り上がりすぎて肉ばかり食べていると、料金がはね上がる。そこで盛り上がりながらも、料金を抑えることを考える。
 考えることはみんな一致している。メニューにバラエティーを富ませると同時に、肉以外で量を増やす。たいていは、チジミとチャプチェを注文する。
 さらに宴の終盤にかけて、もう1つ重要な技がある。「締め」の名目で、冷麺(めん)かピビンパを食べるのだ。ただし、人を選ばなければならない。
 ある時、学生を連れて鶴橋の店に行った。学生はよく食べた。そこで終盤の技を出した。「どちらにする?」。答は「両方」だった。よー食べるなー。
 実はチャプチェの作り方を知らないから、その亜流で。ハルサメを湯で戻す。鶏ガラスープを作る。ごく少なくして、そこにイカの足、青ネギを入れ、ハルサメも加えてさらに煮る。豆板醤(とうばんちゃん)か韓国風の辛みそのようなもので味をつける。
 イカは足でいい。胴の部分は別のメーン料理に使えばいい。チャプチェの方は、副菜でいいのだ。(梶川伸)2016.05.05

更新日時 2016/05/05


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