このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(179) グリーンピースとワカメのだしワサビ漬け 

鮮やかな緑を意識するとよい

 僕が新聞記者になったのは、1970年だった。大阪万博の年で、高度経済成長のピークだった。毎日新聞の新人採用人数も最多で、おかげで僕も記者になれた。
 一方で高度経済成長の負の側面として、公害が大きな社会問題になった。当時は公害を発生させる側と被害者側は、対決型だった。1973年にオイルショックが起き、高度経済成長は終わりを告げた。「公害」という言葉は「環境」に変わり、対決型から社会全体で取り組む方向に変化した。
 そのような経過の中で、環境問題に取り組むNGO「グリーンピース」の動きは、いつも注目を集めていた。なぜこんなことを書くかというと、青豌豆のグリーンピースに結びつけたかったからで、公害や環境問題を考えるためではない。ちょっと無理があったか。
 グリーンピースは、いかにも春らしい。緑の色がそう感じさせるのだろう。若葉、新緑、萌黄色。その初々しさがたまらない。グリーンピースもその範疇(はんちゅう)に入る。
 緑といえば、晩冬から早春にかけてのワカメも外せない。柔らかくて、湯のつけた時の緑が透明感を帯びる。
 遍路旅の昼食に、ワカメのシャブシャブを食べたことがある。高松の友人に教えてもらった店だった。漁業を営む大将が、魚料理を出していた。海岸にあるのだが、細い道を行くので、店があるとは思えない意外性があり、それだけで遍路仲間は喜んだ。
 ワカメのシャブシャブは新しいワカメが獲れる2月ごろの一時期しかやっていなかった。鍋には魚も入れるが、主役はワカメで、みんなガバガバ食べた。
 その時の印象は強い。遍路仲間が淡路島で新摘みのワカメを買ってきて、シャブシャブを食べさせてくれた。鍋でだしを取り、その中にワカメ、ミズナ、シメジを入れた。シメジは少量なので、ほとんどはワカメとミズナ。どちらも緑が爽やかだった。ガバガバ食べたら、翌日はお腹の調子が悪かった。
 考えてみれば、ワカメは胃の中でそう簡単には溶けないような気がする。胃にワカメが根を張ったらどうしよう。
 グリーンピースを塩ゆでする。ワカメは適当に切って、サッと湯に通し、すぐに冷水でさます。濃いだしをとって冷やし、ワサビを溶き、少量の白だしを加える。そのだしに、グリーンピース、ワカメをしばらく漬けてから食べる。春は緑以外の色はいらないのだ。でも、量はセーブしよう。髪の代わりにワカメが生えたら嫌だから。(梶川伸)2016.03.25

更新日時 2016/03/25


関連地図情報

関連リンク