このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(174) ウドの梅和え

白い色が残るように

 春は待ち遠しい。春が間近になるとソワソワする。春が訪れるとウキウキする。
 そのソワソワとウキウキのつなぎ目の時期、つまりソワウキになると、スーパーの野菜売り場が楽しくて仕方がない。春が飛び跳ねながら近づいてくる、スプリング。
 春キャベツが柔らかい緑色を見せる。パスタのメニューで「春キャベツの○○」と書いてあれば、すぐにそれに乗る。目に優しいその色だけで、パスタはいらないくらいである。
 葉ゴボウも緑の茎が若々しい。若ゴボウと言った方がもっと初々しい気がする。大阪では八尾の若ゴボウが、春の合図の1つでもある。夏の河内音頭もいいが、「若ゴボウ」の響きには負けるのではないか。
 山菜も並ぶ。フキノトウは春を告げる山菜の代表かもしれない。フェイスブックを通じ、あちこちの友人が写真を送ってくる。スイスに移り住んだ友人の写真には、天ぷらにして、残りはフキみそにすると添え書きしてあった。
 菜の花は、黄緑にポツポツと黄色が混じるのがいい。新タマネギは色に染まっていないので、見るからに新鮮に思え、手を加えずに食べたくなる。ウルイは爽やかで、見ているだけでいい。
 春は少しずつ近づいてこそ春である。僕が若いころから続いている漫画で、いつまでたっても高校生のチッチとサリーが主人公の「小さな恋の物語」に、素敵な言葉があったのを覚えている。何十年も続いているので、何度も春が巡ってくるので、ある春の場面である。はっきりした言葉は覚えていないので、その意味で書くと、次のようになる。「春は待ち遠しいのに、いつの間にか自分の方が先回りしていた顔で私を待っている」
 春がいっぺんに来ると、えらいことになる。2年前の早春、東京の友人がウドを8本も送ってきたことがある。大きなウドで、1本だけも春を感じるのに、春×8だから春らんまんである。
 天ぷら、カラシ和え、バター炒め、煮物、かき揚げと、さまざまに春を食べた。春を1本ずつご近所さんに届けたが、なかなかなくならず、結局は春の盛りになってしまった。
 その時に作ったズボラな料理。ウドはピーラーで皮をむき、短冊切りにして、しばらく薄い酢水につけておく。だしをとってウドを煮る。ウドがさめたら、酢、白しょうゆ、みりん、細かく刻んだ梅干しで和える。あまり色がつかないようにする。春は白や浅い色がいい。(梶川伸)2016.02.29

更新日時 2016/02/29


関連地図情報

関連リンク